警察官|プロフェッショナル夢名鑑  

「私たち、白バイ隊員の姿を見せることで交通事故の抑止力につながっています。」

お2人が警察官になりたいと思ったきっかけを教えてください。

猪狩 私は箱根駅伝で白バイの警察官に憧れて、です。小学3年生の時、父と一緒に駅伝を見ていて、選手を先導する白バイ隊員の姿がとてもかっこよくて。父に「将来は警察官になってほしい」と勧められたこともあり、その頃から夢は警察官でした。採用試験に合格し警察手帳を手にしたとき、ついに警察官になれたんだと、嬉しさと同時に身が引き締まる思いがしましたね。

齋藤 私は社会人になってからです。実は転職して警察官になったんですよ。高校を卒業して製造の仕事をしていたのですが、もっと人の役に立てる仕事がしたいと思いまして。警察官の道に進んだのは、幼いころ私の祖母や友人が交通事故に遭ったことがあり、悲惨な事故を減らしたいという思いもあったからです。人間って、はっきりとした目標を立てると本気で頑張れるもので、専門学校に通いひたすら勉強と自主トレーニングを行いました。警察官になれたとき、親からたった一言ですが「がんばれよ」と言われたことがとても励みになりました。

警察学校での生活はどうでしたか?

齋藤 学校では規律ある生活のなかで、厳しいトレーニングや訓練、警察官として必要な知識や技能を学びます。私はそのとき24歳だったのですが、周りは高校を卒業したばかりの若い人が多くて最初は戸惑いましたね。でも全員スタートは一緒ですから、年は関係ありません。厳しい訓練を一緒にこなすことで、次第に周りとの仲間意識が生まれたと思います。

猪狩 私が入ったときは学生が100人ほどいるうち、女性はたった7人でした。男女関係なく全員が同じ訓練を受けます。柔道で体力に自信があったとはいえ、やはり厳しい訓練に悔しくて泣いた時もありましたね。でも一緒に励ましあえる仲間がいたから、最後まで頑張れたのだと思います。

もともとバイク好きな斉藤さん。白バイに乗る姿はとても頼もしい!

交通機動隊はどんなお仕事をしているのですか?

齋藤 警察署の交通課は運転免許の更新や道路の規制、交通事故捜査、交通違反の取締りなどの業務を行いますが、交通機動隊は主にスピード違反などの悪質違反を取り締まるのが仕事です。白黒パトカー、覆面パトカーによる取締りも私たちの仕事です。ドライバーにとって嫌な存在かもしれませんが、私たちの姿を見せることが事故防止につながるんです。

猪狩 時にはイベントなどにも参加します。昨年、福島市で女子駅伝が開催された時、なんと先導に選ばれたんですよ。駅伝の先導は私にとって原点ですから、すごく緊張したけれど夢が叶えられたことが嬉しかったですね。また、地震や台風など災害時には被害状況の確認のため出動することもあります。土砂で車が通れない道を、私たち白バイ隊員がオフロードバイクを使って被害状況の確認や、避難経路の確保などに当たります。

齋藤 震災のときは、大熊町で逃げ遅れた方の避難誘導を行いました。原発事故の直後だったので、上司と2人、お互い一緒に仕事をできて良かったと、かたい握手を交わして現地に入りました。当時はそのくらい決死の覚悟で任務に当たりましたね。普段何気なくする会話ですが、家族に『行ってきます』と言って、家に帰って『ただいま』と言える瞬間が一番ほっとします。

私たちの安全のため、常に危険が伴う仕事なのですね。お2人は将来どんな警察官になりたいですか?

齋藤 ドライバーにとって、交通事故では誰もが加害者になりうることがあります。でも相手が急に飛び出してきたり、雨や雪など悪条件が重なって起きる場合もあります。加害者とはいえ、事故を起こそうとして起こしたわけではありませんからね。そんな時、相手の気持ちに寄り添える、そして信頼される警察官になりたいですね。

猪狩 私は自分の姿を見た子どもたちが、将来警察官になりたいと思ってくれるような警察官になりたいです。以前幼稚園で交通安全教室を開いたとき、子どもたちから私の顔と白バイを描いた絵をもらったんです。白バイを見たり触れたりしたのが楽しかったんでしょうね。その絵は縮小コピーして自分の机に貼ってあります。そんな子どもたちのために、常にかっこいい警察官でありたいと思いますね。

女性の交通機動隊員は猪狩さんを含め、県内では2人。普段は青い制服ですが、イベント時にはこの制服を着るのだそう。

将来、警察官になりたいと思う子どもたちにメッセージをお願いします。

齋藤 警察官は常に危険と隣り合わせの厳しい仕事です。でも、いつでもどこでも困っている人がいたら助けてあげたい、という気持ちが警察官にとって一番大切です。それから厳しい訓練や辛い状況でもめげずに、それを乗り越える力を持ってもらいたいですね。

猪狩 私も常にその日ためた疲れやストレスは次の日に持ち越さないようにしています。やはり体力と気力が要る仕事ですから。警察官は子どもからお年寄り、そして犯罪者と、いろんな人を相手にします。人の傷みや気持ちを理解してあげられる人になってくださいね。

お名前 福島県警察交通機動隊 福島県巡査長 齋藤 章雄 (さいとう あきお)さん
出身地 福島県福島市
出身校 学法福島高等学校
座右の銘 「為せば成る 為さねば成らぬ何事も」
お休みの日の過ごし方
7歳と3歳の男子のお父さんでもある齋藤さん。料理をしたり、子どもと一緒に遊んだりしてリフレッシュしているそう。

 

お名前 福島県警察交通機動隊 福島県巡査長 猪狩 七美(いがり ななみ)さん
出身地 福島県いわき市
出身校 磐城桜が丘高等学校
座右の銘 「猪突猛進」
お休みの日の過ごし方
カフェで読書。ベランダでのガーデニングが好きで、いつか小さな箱庭を作るのが目標なんだとか。

※この記事はaruku2014年8月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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