獣医師|プロフェッショナル夢名鑑  

動物相手の医療ですが、飼い主や獣医仲間、人とのつながりも必要な仕事です。

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嶋さんが獣医を目指したきっかけを教えてください。

 私の家では昔からニワトリやシマリス、アヒルなどいろいろな動物を飼っていたので、小さい頃から動物に囲まれた生活を送っていました。なんとなくですが、小さい時から獣医になることは考えていましたね。でも将来をちゃんと考え始めたのは中学生の時。当時飼っていた犬が病気で病院にかかった時期がありまして、そのとき獣医さんや動物病院の仕事を実際に見たことがきっかけでした。そのパグ犬はもう亡くなっていますが、実は病院の外観はその子を模して建てたんです。初心を忘れないために。

幼い頃に飼っていたパグをイメージした嶋さんの病院。確かに正面が顔に見える!?

獣医になるにはまず獣医学部のある大学に入り、そこで6年間学び国家試験を受けます。やはりその勉強は大変でしたか?

 現在、日本に獣医学科のある大学は国公立・私立を合わせて16校しかありません。志願者も多いですし、私も受験に合格するためたくさん勉強しました。実は2浪して、北海道の酪農学園大学に入学したんです。浪人時代は食べる、寝る以外はひたすら勉強していましたね。国家試験の時も同様で、気がつけば12時間机に向かっていました。試験前によく言われたのが「試験勉強はひとりでするな」ということ。なぜかと言うと、獣医学には薬理、解剖、伝染病など医療に関わる幅広い分野から出題されます。そんなたくさんの分野をカバーするためには、互いの穴を埋める仲間が欠かせません。問題を出し合ったり、わからない所を教え合ったり…。大学受験は一人での戦いですが、国家試験は仲間と一緒に戦うという感じでしたね。ですから試験に無事合格できたのは、一緒に国家試験に挑む仲間の力があったからこそだと思います。

動物病院に勤務してからのことを教えてください。

 私は学生のとき研修医としてお世話になった、埼玉県にある動物病院に勤務しました。でも獣医の免許を持ったからといって、なんでもすぐ出来るわけではありません。病院に来る動物たちも毎回治療法が違いますし、一回で決めなければならない採血も相当なプレッシャーでした。ですが、それ以上に緊張したのが、飼い主さんとお話をすること。今までは大学や研修先の先生や学生相手ばかりだったので、初対面の飼い主さんから症状をきちんと聞いたり、治療法をわかりやすく説明したり…、相手が自分の話を理解できるよう、丁寧にそして緊張せずに話すのはとても大変でした。接客も含め、仕事のいろはを先生や先輩に教えられたり、経験を積む毎日でしたね。

大きい動物を診察台に持ち上げたり抱えたり、仕事はかなりハードワーク!サポートするのは動物看護師の谷苗さん。

仕事でやりがいを感じることはどんなときですか?

 病院に来た時は自分で立てないほど弱っていた動物が、治療で徐々に元気になっていく姿を見ることが一番うれしいですね。飼い主さんは必ず治ると100%の結果を求めて病院に来てくださっています。そのため、獣医はその期待に応えられるように、たくさんの経験と知識が必要です。獣医になった今も毎日が勉強ですよ。そのため、県内にいる獣医師の仲間たちと勉強会に参加したり、情報交換をしたり、お互いをサポートし合う体勢をとっています。国家試験の時もそうでしたが、獣医になった今も助け合える仲間は欠かせません。いま、福島県には夜間専門に診療する動物病院がないので、その仲間たちと夜間病院の設立に向けて働きかけもしています。

将来、獣医を目指す子どもたちにメッセージお願いします。

 「獣医さん」というと動物病院の先生をイメージするかと思いますが、牧場や畜産農場、競馬場、公衆衛生に関わる役所、製薬会社など、たくさんの場所で活躍しています。獣医になるには動物が好きなことはもちろんですが、話せない動物の代わりに話をしてくれる飼い主さんの気持ちも理解しなければなりません。飼い主さんと連携して、ひとつのチームになって動物たちの怪我や病気に立ち向かう、それが理想の治療だと思います。たくさんの友達や仲間をつくって、人の心を理解できる獣医さんになってほしいですね。


嶋さんのお仕事の必需品
診察器具の一部。聴診器や体温計の他、耳の中や眼球を診る道具など。
最近はタブレットでレントゲン写真や治療結果を飼い主さんに見せて説明します。

ペットを飼っているみなさんへ

「動物も人間と同じで定期健診が必要です。犬や猫は人間で言うと1年で4~5才ぶん成長します。病気になった時だけでなく、最低でも1年に1回は健診を受けましょう。病気の予防や早期発見にもつながりますからね」

お名前
しま動物病院院長・獣医師 嶋 拓也(しま たくや)さん
出身地
福島県郡山市
出身校
酪農学園大学 獣医学部 獣医学科(現在は獣医学群 獣医学類)
座右の銘
「忍耐」
お休みの日の過ごし方
4歳と8ヶ月の2人のお子さんと過ごすこと。小学生から続けている水泳が得意で、以前はプールによく通っていたそうです。

※この記事はaruku2014年10月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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