パイロット(後編)|プロフェッショナル夢名鑑  

前編・後編に分けてパイロットについてご紹介しています。
今回は後編。前編を見逃した方はこちらでチェックしてね。
前編はこちら

「初めて乗る方も安心できるような、快適なフライトを心がけています」

後編は菅原さんが航空大学校を卒業して、ANAに入社されてからのことをお聞きしたいと思います。

菅原 入社後はまず地上研修を行いました。現在放映中のドラマ『ミス・パイロット』でパイロット訓練生が旅客ハンドリングの部署や整備の部署に配属されていましたよね。実際、入社後はあのような形で研修を受けました。私は、パイロットの訓練全般をマネジメントする「乗員訓練部」に配属になり、半年ほど業務に携わりました。航空会社には様々な仕事をする人がいます。その大勢の人の支えがあって、初めて飛行機が飛ばせるのだなと、地上研修を通して実感しましたね。

地上研修のあとはいよいよパイロットとしてのお仕事が始まるのですか?

菅原 地上研修後はまた飛行訓練、そして試験が続きました。航空会社で飛行機を操縦するためには、機種ごとに技能証明が必要になります。海外や国内で訓練を重ね、最終試験に合格できて、初めてお客様を乗せて飛行機の操縦ができるのです。私はボーイング737の副操縦士の免許をまずは取得しました。その次にエアバス320の免許を取り、今はそのエアバス320の副操縦士として、羽田空港を拠点に1日平均2~3便ほど乗務し、文字通り日本中を飛び回っています。

菅原さんにとってすごく印象深かったフライトはありますか?

菅原 副操縦士として初めてのフライトのとき、自分の両親を招待したことですね。その時、機長のはからいで機内アナウンスもさせていただきました。その時やっと親に恩返しができたなと思いましたね。航空大学校時代に、故郷である福島空港へフライトしたときや、管制官である父がレーダーで私のフライトを見てくれていたときも嬉しかったのですが、やはり一人前になった自分を見せられた時はとても誇らしかったです。今は毎日やりがいを感じながらフライトしています。

ご両親にとってもすごく嬉しかったでしょうね。では、いつも心がけていることは何ですか?

菅原 飛行機は安全に運航できるように設計されている乗り物だといっても、初めて乗る方はやはり不安になることもあると思います。ある時、お客様の中に一人で搭乗するお子さまがいたのですが、離陸するまでずっとお母さんが搭乗口で見送っていたんです。その姿を見て、改めて責任の大きい仕事だなと感じました。お子さまにも、あまり飛行機に乗らないお客様にも、快適に感じる安全なフライトを心がけていきたいですね。そして、整備士や管制官、グランドスタッフなど常に周りの方たちへの感謝の気持ちを大切にしていきたいです。大勢の人の支えがあるからこそ、飛行機を飛ばすことができるのですからね。

郡山市出身のキャビンアテンダント五十嵐さんと

菅原さんのこれからの夢や目標を教えてください。

菅原 今はまだ副操縦士の立場ですので、まずは機長になることが一番の目標です。そして先ほど述べたように、お客様に快適なフライトを提供していくことですね。パイロットは客室に行く機会がないので、キャビンアテンダントを通してお客様から「ありがとう」と言われることが何よりの励みになります。以前、小学生のお客様から「パイロットさんへ うんてんじょうずだね またのせてね」という手紙をいただいた時は、思わず涙が出そうになりました。その手紙は今でも大切に保管しています。かつて自分がこの仕事に憧れたように、自分も子どもたちに夢を与えられる存在になりたいです。

将来、パイロットを目指したいと思っている子どもたちに、アドバイスやメッセージをおねがいします。

菅原 自分の得意分野だけでなく、いろんなことに興味を持つこと、そして吸収していくことが大事だと思います。職業柄、他のお仕事の方と接する機会が少ないので、世の中の動きを知っておくことは大切だと思いますね。コックピットではたいてい二人の操縦士で業務を行っているのですが、一緒に組む相手は毎回変わります。お互いが知らないことを知っていると話題も広がりますしね。航空会社には色んな仕事があるように、社会に出れば色んな人たちと関わっていきます。良い仕事をする上でコミュニケーションは必要になりますから、技術だけではなく、相手をちゃんと思いやること。これも大切なことだと思います。

お名前
ANAフライトオペレーションセンター エアバス部副操縦士 菅原 聡(すがわら さとし)さん
出身地
東京都東久留米市(福島県郡山市生まれ)
出身校
獨協大学法学部・航空大学校
座右の銘
初志貫徹 子どもの頃から夢だったパイロットになれた菅原さんだからこその言葉。「途中で諦めなければ、その先に何かあると信じています。目標を見つけたら、誰にも負けないぐらい思い続け努力しましょう。きっと願いは叶いますよ。」

※この記事はaruku2013年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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