グルメ
郡山市

完成させよ!黄金のいなり寿司 ―黄金いなり柾屋【まさきや】の、いなり寿司誕生秘話―


郡山市にあるいなり専門のカフェ「黄金いなり柾屋」。いなり寿司のテイクアウトはもちろん、定食ランチもできるとあって連日賑わいを見せている。

郡山市内のカフェや定食屋は数多くあれど、いなり寿司を看板にしているのはここだけである。何故いなり寿司なのか?そして味はいかほどなのか?これはいなり寿司に賭けた男たちの戦いの物語である―。

プロローグ

「おいなり屋さんをやりたい。」
―全てはオーナーのこの一言から始まった。

いなり寿司に決まったのは即座であった。店舗のコンセプトを決める会議の場で、オーナーが「おいなり屋さんをやりたい。理由はいなり寿司が好きだから」その一言であるという、極めてシンプルなことであった。

そうと決まればいなり寿司の開発だ。「お店の味」をどんなものにしていくか、ここから約3ヶ月にも渡る男たちの激動の戦いが始まったのである。

Chapter①―油揚げ選び


いなり寿司づくりに必要なのは油揚げ、米、調味料。男たちはまず、油揚げ探しから始まった。

油揚げと言っても、厚み、歯ざわり、風味、香ばしさ、味は千差万別。県内外の小売店やスーパー、豆腐店や卸業者からありとあらゆるタイプの油揚げを集めた。その数は何十種類にも及び、理想としている油揚げを探し求める日々が続いた。「油揚げとはこんなにも広い世界なのか…」と途方に暮れ始めた頃、とある食品会社の油揚げを見つけたのである。

「これだ!!」


それは高知県にある、油揚げや大豆食品を製造する会社だった。その油揚げは他に類を見ないほど厚みがあり、皮も黄金色に輝くものであった。タレを十分に吸い込み、一口噛むとジュワッと口の中に広がるその特徴は、まさに男たちが追い求めていたものであった。

Chapter②―タレづくり


油揚げが決まれば次は味だ。調味料選びから間違えば、理想の味とは程遠くなる。しかしこれが困難を極めた。目指すべきはただ美味しいのではなく、オーナーのイメージという実にぼんやりとしたものなのだ。甘いのか、ダシがきいているのか、濃いのか、薄いのか…。味見をしては「違う」、また味見をしては「違う」ということを繰り返した。

とうとう、ひとりの男が苦言を呈した。
「その味がわからなければ作り続けても意味がない!一体何が正解なんだ!!」

そこで、オーナーはその男をとある場所へ連れ出した。リサーチと気分転換を兼ねて、全国のいなり寿司が集結するイベントへ出向いたのである。古今東西の出店者が提供するいなり寿司はシンプルなもの、華やかな具材のもの、個性的な味のもの…と数多く並んでいた。
「この中にヒントが隠されているかも…」と、男たちは全ての種類を購入し、持ち帰った。そして全て味見をし、モヤがかっていたイメージが次第に晴れていくのがわかった。そう、ついに見えたのである。目指すべき味が。

「これだ!!」

出口が見えればその後の味開発はスムーズに進んでいった。醤油は白河市の醸造所の2年もろみ醤油、ダシは昆布・鰹・あごの3種、砂糖はザラメ…と材料や配合率、そして糖度も次第に決まっていった。そしてとうとう、ダシの風味・旨み、コク、甘味がバランスよく調和された理想のタレが完成したのである。

―いなり用の油揚げができるまで―


タレに使う3種のダシ。量や火にかける時間など細部に渡り作り方が決められている。


使う醤油は白河市にある老舗醸造所『根田醤油』の二年もろみ醤油。


高知県の食品会社から取り寄せるお揚げを1枚1枚鍋に投入。


ふっくら、ジューシーに染み込んだお揚げは、一晩おいて味を落ち着かせている。

Chapter③―シャリづくり

しかし、まだまだ男たちの戦いは終わらない。次はシャリだ。油揚げの味を邪魔せず、味が調和する酢飯を作らねばならないのだ。

酢飯づくりは酢を混ぜるところからではない。米研ぎから始まるのだ。なぜなら酢や砂糖と混ぜた時にベチャっとしたり、塊になったりしない米粒の状態でないと全てが台無しになるからである。米の研ぎ方、炊飯のタイミング、ヘラでの切り方、袋への詰め方…。ここまできたら、とことんこだわってやろうという男たちのプライドが垣間見えた。

そして寿司職人にもアドバイスをもらいながら、様々なタイプのシャリを作っては油揚げに包み、試食を繰り返した。油揚げに厚みがある分、シャリは味が強すぎてはいけない。そして誰が食べてもうまい、ぶれないという「黄金いなり」がようやく出来上がったのである。

「これだ!!」

この間、どれほどのいなり寿司を食しただろうか。困難に陥り、試行錯誤を繰り返し、時には衝突し…。約3ヶ月という、短いようで長い男たちの戦いは幕を下ろしたのである。

―シャリができるまで―


寿司職人仕込みの酢飯づくり。味や温度が一定になるため切り方も工夫されている。


口に入れた時にほろっとほどけるように、シャリの詰め方・握り方も絶妙な加減が求められる。


完成したのがコチラ。1つの寿司桶から約50のいなり寿司が出来上がる。

エピローグ

2018年、秋。満を持して「黄金いなり柾屋」がオープンした。これまで無かったいなり寿司の店は口コミの力もあり好評だった。行楽シーズンの他、ランチの時や帰りに必ず持ち帰りに購入するファンも増えた。最初は4種類だったいなり寿司も、現在は様々な種類が加わり9種類となった。


ノーマルな黄金いなりをはじめ、取材時は梅ひじき、そぼろ、焼き、ゆず、蕎麦などバラエティに富んだいなり寿司を提供していた。これからも季節に合わせて種類が変わっていくという。


いなり寿司はこれまで助六寿司にあるもの、蕎麦・うどんのおまけに選ぶものという位置づけだった人も多いであろう。だか、いなり寿司とはこれほどまでに奥深く、こだわりを追及させるものだと感じたはずだ。

興味が出てきたら、ぜひ「黄金いなり柾屋」に足を運んでもらいたい。そしていなり寿司を手に取って食してほしい。きっと、今までのイメージを覆すいなり寿司に出会えるはずだ。

今月のメニューはこちらをチェック

SHOP INFO

黄金いなり 柾屋

Googleマップ

郡山市山崎221

    営/11:00~21:00
    ランチ11:00~15:00
    カフェタイム15:00~19:00
    ディナー18:00~21:00(Lo.20:30)
    ※いなり寿司の販売は11:00~17:00
    休/水曜

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