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地域医療のスペシャリスト・星 北斗氏に聞いた『これからの福島に必要なこと』

少子高齢化、過疎化、経済・学力格差…。地域、そして子どもたちを取り巻く環境が年々変化し続けている昨今。さらに新型コロナウイルスの流行により、医療体制の問題や学力格差など様々な課題が浮き彫りとなりました。

『地域住民が安心して暮らせる医療体制。そして未来を担う子どもたちに、希望が持てる福島にしていかなければならない』。


こう話すのは、理想の地域医療を目指す星 北斗(ほし ほくと)さん。旧厚生省(現厚生労働省)で医系技官、福島県医師会では最近まで副会長を務め、現在は星総合病院の理事長を務めています。

福島に安心できる“地域医療”を

星さんがまず目標に掲げているのが、理想の地域医療の体制を築くこと。2020年、突如世界を襲った新型コロナウイルスの流行。今でも変異し続ける新型ウイルスの脅威と戦いながら、予防の啓蒙やワクチン接種、感染者のケアなどに医療従事者の皆さんが取り組んでいますね。


星さんも福島の医療を担う代表者として、感染者の入院やワクチンの集団接種など率先して対応に当たりました。その取り組みはコロナ郡山モデルを確立し、その後の医療体制をリードしていきました。

『2011年の東日本大震災でもそうでしたが、さまざまな自然災害、新たなウイルスの出現などに備えるには、“地域医療”の力をしっかりと強化しておく必要があると改めて感じました』。

福島県医師会副会長でもある星さん。


星さんが地域医療に力を入れるきっかけとなったのは、医系技官として旧厚労省に勤めていた頃、1995年に起きた阪神・淡路大震災。未曽有の都市災害において、情報も交通も混乱した中での医療現場を星さんは目の当たりにしました。「ですが、神戸から永田町に戻るとがっかりするくらい一部の役人や議員の方たちの意識の違いや温度差を大きく感じました。だからこそ、このような非常時でも対応できる医療を本気で作らねばならない。災害医療の体制を国中心に取り組まなければならない、と強く思うようになったのです」。


現在コロナ対策として検査機関・医療機関における診療・検査体制の拡大・連携強化や、新たな変異株などウイルスの感染拡大を想定した病床・療養施設の確保と受け入れ体制の強化に勤しんでいる星さん。合わせて、防災対応体制の強化と災害時健康危機管理支援チームの設置など大規模災害に対応できる体制の整備などにも働きかけています。「地震、水害、そしてウイルス。様々な状況下で対応できる盤石な医療体制を作るべく、災害に強い地域医療を作り上げることが、私の目標です」。

地域医療を通して子どもたちの健康、そして“笑顔”を!


原発事故による健康不安の解消や、将来にわたる健康の見守りなどを目的として福島県が実施する「県民健康調査」。その検討委員会の座長としても星さんは活躍し、県民全体、とりわけ子どもたちの健康維持に力を入れてきました。

「3.11の原発事故によって、県民の方々、特に子どもたちにとって“見えない恐怖”と“将来の健康不安”を与えてしまいました。放射線への不安から屋外運動の機会を奪い、子どもの健康や体づくりにさらに影響が出るのではないか、親御さんの不安も計り知れなかったと思います。平成25年(2013年)に座長に就任した私は、子どもたちの“こころ”と“からだ”の健康づくりのため、健康調査やデータ収集、甲状腺検査などあらゆる取り組みを進めました。それはコロナ禍の中である現在も遂行されています」。


星病院では保育所の他、学童保育やフリースクール等を兼ねた大町キッズベースなど子どものための交流施設を運営しています。

その理由を聞くと「私たちの病院の取り組みとしては、地域全体でこれからの未来を担う子どもの育成をすることが大事だと思っています。それは健康や保育のサポートだけではなく、地域の様々な人たちと触れ合って地域社会や土地の文化、食を知り、自分の地域を好きになってもらうことが目的です」と星さん。


「交流施設はそのきっかけ作りの入り口。地域の方達との交流を通じて、自然体験や社会体験活動を積極的に支援していきたい。子どもたちが将来、地域社会の一人として自信をもって役割を担っていけるように」。

ふるさと福島に、輝かしい未来が訪れるために


福島県には、四季折々の美しい景色、豊かな自然の恵みがあります。先人たちが磨いてきた文化や、誇るべき歴史があり、美味しい食や酒も豊富。ですが、3.11での東京電力福島第一原発の事故以降、それは一変してしまいました。

「食に限らず、福島で生産される観光や製造にも風評被害が広がり、私自身も歯がゆい思いをしてきました。あれから11年経ち、徐々に信頼回復はされてきたものの未だ風評被害は残っています。私は科学的事実に基づいて風評を吹き飛ばし、これまでにない新たな地方創生に取り組んで競争力を強化していくことが、福島の未来につながると思っています」。

医師の立場から、まずは福島の医療関連産業の集積をサポートしたいと話す星さん。「医療機器開発から事業化まで、企業の状況に応じ適切な支援ができるようになれば、福島の医療関連産業の発展につながりますし、医療向上にも期待できると思います」。


また、復興が遅れている浜通り地域等の産業創出や再生は、福島にとって特に必須と語ります。

「人材育成や住民帰還の促進に向けた福島イノベーション・コースト構想の推進は、福島の新たな産業と雇用を生み出すチャンス。医療に関わる私にとっても浜通りの復興と活性化は地域医療の改善にもつながりますし、最先端の技術・研究が集まれば、未来の子ども達が働く場、学ぶ場が広がっていけると思います」。

福島県医師会の副会長として県民健康調査の座長に就任したり、地域の医療格差を是正するための提案を医師会に働きかけたりと、すべての県民の“命”を守るため、安心して暮らせる医療体制づくりに取り組んできた星さん。これからも、放射線や新型コロナウイルスへの不安な気持ちに寄り添いながら、子どもたちの“笑顔”があふれる福島を築いていくよう邁進中。そんな星さんに期待せずにいられません!

星さんのインタビュー記事はこちらから見られます!
理想の地域医療とは?元医系技官・星 北斗さんにインタビュー!|プロフェッショナル夢名鑑 


元医系技官・前福島県医師会副会長・星総合病院理事長
星 北斗(ほし ほくと)さん

[プロフィール]
福島県郡山市出身。東邦大学医学部を卒業後、医系技官として旧厚生省(現厚生労働省)に入省。アスベスト問題や、発がん性を持つ化学物質の管理やMSDSの義務化、雇用や労働災害に関する保障制度、放射線治療の診療報酬の改革、今では当たり前となったインフォームドコンセントなど、様々な政策に取り組む。星総合病院理事長に就任して以降、東日本大震災や2019年の台風災害、新型コロナウイルス対策などに地域医療として対応。また、福島県医師会副会長として、福島県全域の地域医療体制にも取り組んだ。休日はウクレレの練習や、趣味の料理。シーズンになると自転車やスキーなどアクティビティにも出かけるそう。

星さんの公式サイトはこちら↓
星北斗 公式サイト

※この記事は2022年6月に制作したものです。内容は取材当時のものです。

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