公認会計士 |プロフェッショナル夢名鑑

会計士は資本主義の発展も支えた仕事。それだけ社会的な責任があることを常に意識しています。

上石さんの趣味は30年以上続けているゴルフ。休日はゴルフに出かけてリフレッシュすることが多いそう。

公認会計士を目指そうと思ったきっかけはなんですか?

上石  大学入学後、何か一生役に立つ資格をとりたいと思うようになりました。そのとき自分が商学部だったこともあり公認会計士という職業を知って、挑戦してみようと思ったのがきっかけです。大学に入るまでは公認会計士という資格についてよくわかっていなかったんですよ。馴染みのない職業でしたから。

公認会計士になるまでにはどのような試験過程があるのですか?

上石  私の頃は今と異なり、大学の教養課程を終えた人は1次試験が免除されました。2次試験は3日間かけて簿記論、財務諸表論、原価計算論、監査論、商法、経営学、経済学の7教科を受けます。当時は会計大学などもなく合格率は3%程度で、私も大学を卒業して3年後にやっと合格しました。その後は「会計士補」として、アーサーヤング会計事務所(※1)で3年間の実務補修、実務研修を積みながら夜は勉強する毎日を過ごし、監査実務、税務実務、口頭試験からなる3次試験に合格して公認会計士になりました。アーサーヤング会計事務所に7年間勤務した後は、福島へ戻り、会計事務所を立ち上げました。

※1アーサーヤング事務所…現在は合併し、アーンスト・ヤングとなり新日本監査法人の国際部となっている。

公認会計士はどのようなお仕事をするのですか?

上石  私は公認会計士の資格で税理士の資格も得たため、普段は税理士業務も行います。税理士と会計士は同じに思われやすいですが、本来会計士は会計の専門家として企業が公表する財務諸表を監査する業務を行っています。上場企業などは監査法人(※2)の会計監査を受ける義務がありますが、それは会社が発表する財務諸表を第三者が監査して信用を高めることで資金集めを可能にするからです。だから、我々が責任を持って監査しないと資本主義が成り立たないんです。信用性の高い決算書があることで、銀行はお金を貸すかどうか判断し、投資家は株を買い、取引会社は取引の是非を決めることができるんですよ。

※2監査法人…5人以上の公認会計士によって設立される法人組織。

自身の机のすぐ後ろにある大量の証憑書類。書類に囲まれて仕事をしていることが多いと言っていました。

企業の信用性を高めるためには不可欠な存在なのですね。

上石  はい。そのため、提出された書類はひとつひとつ確認します。万が一にも間違えれば監査法人にとっては死活問題。信用を失うだけでなく、会社や銀行から訴えられれば保障に耐え切れなくてつぶれる可能性だってありますから。我々の大きな特徴としては、報酬は依頼者からいただくだけですが、責任は依頼者以外の人に対しても持たないといけないこと。責任の社会性が一番の特徴です。

無理なお願いをされることはないのですか?

上石  もちろんありますが、無理を言われたらもうやらないときっぱり断ります。言いなりで作った決算書では簡単に信用を失ってしまいますからね。しっかり線引きをするからこそ我々の監査した決算書は信用性が高いと判断されるんです。それに、真面目にやれば真面目な人がお客になり、不真面目にやれば不真面目な人がお客になる。私のお客も「先生がそういうなら仕方ない」と納得してくれる人が多いんですよ。実は、普段からリスクを避けるよう気をつけているので、仕事以外でも話の表面だけでなく裏面を推測する習慣がついているんです。

印象に残っている出来事などはありますか?

上石  福島に戻って間もない頃、知人が三春ダム建設のため土地の売却契約をして全額代金をもらったが代替資産を取得しないうちに亡くなり、息子さんが代金をもらっているので売却済とみなされ、代替資産を取得していないので譲渡税を払う必要があり、残った現預金は相続税の対象になると言われて困っていたんです。そこで私が相談にのり調べると、引き渡しの日は契約した日の1年後だったんです。それなら今の段階で税金を払う必要はないと考えて税務署にかけあい、最終的には国税局にまで確認して売却がなかったことにされました。それがきっかけでダム関連の申告をたくさんやりましたね。とても感謝され、未だにその時担当した人たちが会いに来てくれるんです。私も土地の譲渡や相続という資産税に詳しくなり、今でも得意としています。会計士というと法人税が一番得意だと思われがちですが、人それぞれなんですよ。

公認会計士を目指す子供たちへメッセージをお願いします。

上石  会計は世界共通語です。会計士には一般企業の役員や監査役、教授になる人もいますし、英語が堪能なら海外でコンサルティングとして活躍する人もいるくらい活躍の場がある仕事です。会計士は健全なる懐疑心(かいぎしん)をもって取り組め、と言われますが、そんなものなくとも決められたことをしっかりやればいいと思います。我々の世界は専門的で一般の人はわからないことも多いですが、知識さえあれば会計のトリックに気づいて普段のニュースなども違う角度から考えることができるようになりますよ。そういった意味ではとてもやりがいのある仕事だと思います。

お名前
上石公認会計士事務所/(有)あさかマネジメント 上石 三好(あげいし みよし)さん
出身地
福島県田村郡三春町
出身校
中央大学商学部
座右の銘
夢の裏にリスクあり

※この記事はaruku2015年11月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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