臨床検査技師|プロフェッショナル夢名鑑

技術を磨くことに終わりがないからこそ常に極め続けなければいけない。それがやりがいなんです。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんにCPAPを取り付ける黒﨑先生。

黒﨑先生が臨床検査技師を目指したきっかけを教えてください。

黒﨑 高校のときに看護師を目指す友達につき合って医療系専門学校の説明会に参加したんです。そこではじめて臨床検査技師を知り、自分の性格に合いそうだなと思いました。それまでは数学の教師になりたいと思っていたんです。でも、それがきっかけで医療系の専門学校に進み、国家資格をとって今の病院に就職しました。

資格試験はどのような試験なのですか?

黒﨑 まず、臨床検査技師の専門学校や、大学を卒業してはじめて受験資格が与えられます。試験はマークシート方式で専門的知識を問う内容です。卒業してからの受験になるので、1回目の挑戦で合格できないと大変だと思いますね。一発で受かるぞと言う気持ちが大切です。

臨床検査技師とはどのような仕事なのですか?

黒﨑 この仕事を大きく分けると3つです。まず、心電図や超音波、脳波などに携わる生理検査。次に血液や尿などを検査する検体検査。そして臓器・組織・細胞の標本を顕微鏡などを用いて病気の原因を調べたりする病理・細胞診検査です。それぞれの分野でさらに細かく内容は分かれていて、その様々な検査を行う技術者が臨床検査技師です。

黒﨑先生は今どのような分野のお仕事をしているのですか?

黒﨑 私は、生理検査の中でも睡眠障害の診断検査や治療に関わっています。主に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんです。検査の方法は、実際に患者さんに1泊入院していただき、終夜睡眠ポリグラフ検査を行います。この検査は脳波・心電図・呼吸・眼電図などを記録して解析します。その後、睡眠時無呼吸症候群の患者さんはCPAPという機械を使っての在宅治療になることが多いんです。そのため、自宅で機械の不具合などトラブルが起きたときは私たちがアドバイスしています。検査だけではなく、患者さんからの相談や生活指導にも関わる仕事です。

検査技師の方も直接患者さんに接する機会があるのですか?

黒﨑 生理検査は直接患者さんに接しなければ出来ない検査です。それに、採血も検査技師が行っている施設が多いんです。今は検査の種類も多いため、採血管に血液を入れる順番や保存の仕方も目的によって違いがあるんです。検査の専門家である検査技師が採血を行い、各種の検査を実施することで、より正確なデータを出すことが可能になるわけです。昔の検査技師は検査室の中で仕事をすることが多かったのですが、現在は外来や病室に出向いて仕事をする機会が増えています。だから、病院の中は医師や看護師が働いているイメージが強いと思いますが、実際には私たち検査技師をはじめ多くの職種がいて、チーム医療が成り立っているんです。

睡眠センターのスタッフと。睡眠の検査は夜間に実施し、結果の詳細な解析は日中帯に行っています。

知らないだけで実際は患者さんと身近に関わっていたのですね。

黒﨑 そうですね。うちのスタッフは午前中は超音波検査、午後は睡眠に関わる検査、とかけもちすることも多いんです。だから患者さんには多く関わっていると思います。検査技師の業務は本当に範囲が広いので、その中でひとつひとつの専門性を高めていかなければいけないんです。

技術力が問われるのですね。

黒﨑 そうですね、この仕事は特に技術の差が出ます。他にも、修理を依頼された車がその場ですぐ症状が出ないこともあります。そんなときは、お客様から聞いた症状に対して考えられる原因が何か、今までの自分の経験や知識を元にいくつか出して怪しいところから一個ずつ調べていくんです。これは経験がないと難しいことですよね。そういった面でも職人気質の仕事だと思いますし、経験を積んで活かしていかなければこの仕事はつとまりません。

専門性を高める、とは具体的に何をするんですか?

黒﨑 私は以前、生理検査の中でも超音波検査を行っていましたが、超音波検査って必ずしも同じ結果がでるわけではないんです。検査する人によっては技術の差が出てしまうこともあります。だからこそ臨床検査技師の国家資格のほかに、さらに腕を磨くために専門技師の認定なども取得するようにしています。超音波なら超音波認定技師、私なら睡眠認定技師という風に。専門が変わればそのたびに勉強して認定を取って、ひとつひとつの専門性を極め
ようと努力しています。

経験や技術を磨かなければいけないのは大変ですね。

黒﨑 そうですね。だから私たちは患者さんを検査する前に十分に時間をかけてトレーニングして経験を積みます。卒業してすぐに検査ができるわけではないんです。例えば、超音波検査であれば、病気に対する知識や病変に対する画像的なイメージが頭になければ正しい判断ができません。病気を見逃さないように精度を保つことが求められています。終わりがないからこそ常に極め続けなければいけない。私の場合、それがプレッシャーではなくやりがいになっています。

臨床検査技師を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。

黒﨑 私がよく思うのは、もう少し英語を頑張っていれば良かったなということです。特に今携わる睡眠の分野は、まだ日本では文献も少なく、英語の本を自分で翻訳して読まなければいけないこともあります。それに私たちが論文や医学誌に文章を書く際も、必ず英語が必要になるんです。だから、この仕事に関わらず英語って大切なのでしっかり勉強して欲しいですね。あとは、この記事を読んで、臨床検査技師を知って目指す子どもたちが1人でも増えたら嬉しいです。

超音波検査で心臓の3D画像を診る黒﨑先生。この画像をもとに心臓外科の先生とディスカッションしたりしています。

お名前
太田西ノ内病院 臨床検査部生理検査科 技師次長 黒﨑 幸子(くろさき さちこ)さん
出身地
福島県二本松市

出身校
安達高等学校→湘央医学技術専門学校
趣味
編み物が大好きで、セーターなどを作っているそう。昔は糸を買った店で展示してもらっていたこともある腕前なんだとか!

※この記事はaruku2016年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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