動物飼育員 | プロフェッショナル夢名鑑

動物たちを通して、命の力強さや尊さを感じてもらいたいです。

これまでゾウやカバ、ウサギ、モルモットなどを飼育してきた石井さん

動物飼育員を目指そうと思ったキッカケを教えて下さい。

石井 もともと動物が好きで、幼少期から動物に携わる仕事に憧れていました。高校生になってから真剣に動物飼育員になりたいと考え始め、飼育に関する専門学校に進学したのですが、授業は犬や猫などのペット用の動物が中心。僕はライオンを目指していたので、講師の先生にそのことを相談したところ「動物園で働きたいなら、同じ猫科の動物も勉強しておいた方が良い」とのアドバイスを頂いて。それからは猫科の動物を図鑑や普段読まない本を読んで、必死に勉強しましたね。

飼育員として働き始めた当初はいかがでしたか?

石井 入社してゾウの担当になった当初は、今まで触れ合ったことのない動物だったので大変でした。声かけやエサやりを通して、心の距離を縮める作業から始まり、今年で8年目。今では表情を見て「元気そうだな」など、なんとなくではありますが、分かるようになりました。ここでは放し飼いをしているため、他の動物のケンカにゾウが誘発され、興奮してしまうことがあるのですが、僕や他のスタッフが近づくと、自然と落ち着いてくれるんです。そういった一面を見ると、信頼してくれているような気がして嬉しくなりますね。

具体的に普段どのような仕事をしているのですか?

石井 1日の始まりはエサやりから。ゾウは野生の中でも草を食べ続ける動物で、ここでも1頭につき50kgの干し草を与えています。現在2頭のアフリカゾウの世話をしているので、用意する量は全部で100kg。手作業で運ぶには無理があるので、フォークリフトで1度に大量の干し草をゾウ舎に運び、必要な分を与えるようにしています。あとは、フンの掃除や体の汚れを落とす作業も欠かせません。ゾウには気温が高くなると、泥水を浴びて体を冷やす習性があるのですが、ここには泥水がないため、自分のフンを浴びようとしてしまうんです。担当する動物によってはショーの練習をしている飼育員もいますよ。ショーは動物の習性を利用して行っていますが、構成や見せ方は飼育員が決めるため、動物の知識に加え、エンターテイメント性も求められる部分でもあります。

仕事をするうえで、気をつけていることはありますか?

石井 動物たちの体調管理には細心の注意を払っています。飼育する動物とは一緒にいる時間が長いために、目が慣れて、病気などで少し痩せても気付かない場合もあるんです。なので、その時の体調を把握するために、フンの状態や動き方などをしっかりと確認するようにしています。それにゾウは少し滑らせただけで、足を痛めてしまう繊細な動物でもあります。その際、リンゴに飲み薬を埋め込んで食べさせているのですが、違和感なく食べられるよう、普段からリンゴは手渡しで食べさせ、習慣づけさせています。

やりがいを感じる瞬間を教えて下さい。

石井 飼育員として、繁殖をさせることも重要な役割。僕はウサギやモルモットの世話もしているのですが、新たな命が誕生した瞬間は、この仕事をして良かったと思いますね。ですが、誕生する命もあれば、死んでしまう動物たちもいます。ウサギやモルモットだと、成長過程で2割ほどは死んでしまうのが現実なのです。他にも、担当していたカバが足を悪くし、成すすべなく死んでしまった経験もあります。飼育員になれば、動物たちの死に直面することは、1度や2度のことではありません。動物の寿命は人間と違うのは当たり前ですから。ただそれを理解した上で、悲観するだけでなく、それを乗り越えて次にどう活かすかが重要です。僕はこの経験を糧に、これからも動物たちにとってより良い環境を作り、訪れたお客さんが沢山の命に触れ合える場所にしていきたいです。

Q&A

Q.どうやったら動物飼育員になれるの?
A.動物関連の専門学校、または畜産専攻の大学で動物生態学を学び、そこから動物飼育員を目指すのが主流となっています。ちなみに動物園には大きく分けて2種類あり、サファリパークのような民間の動物園のほかに、国が運営する公立の動物園があります。公立の動物園の場合、公務員試験を合格しなければならないので、チェックしておきましょう。

Q.資格は必要なの?
A.飼育員になるために特別な資格は必要ありません。しかし中には「学芸員」や「獣医師」の資格を得てから、飼育員になる方もいるそうです。これらは業務にあたる上で大きく役立つので、積極的に資格取得を目指しましょう。

ゾウの“ララ”ちゃん。石井さんに積極的に鼻を伸ばして、信頼関係の深さが垣間見えました。

近くに野生動物が現れた際、病気やダニが飼育している動物たちに移っていないかを確認するのも大事なお仕事。

お名前
東北サファリパーク 石井 健太(いしい けんた)さん
出身地
福島県双葉郡富岡町
出身校
仙台コミュニケーションアート専門学校 エコ・コミュニケーション科
休日の過ごし方
DVDを観る、お出かけ

※この記事はaruku2017年6月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

連載