エネルギー系研究者 | プロフェッショナル夢名鑑

地道な研究が大きな発見に繋がるかもしれない、それが研究者の醍醐味です。

『福島再生可能エネルギー研究所』に勤めて今年で4年目の望月さん。
これまで「半導体粒子ホール効果」や「半導体レーザー」の研究をしてきたそうです。

望月さんはなぜ研究者の道を志したのですか?

望月 僕の親父も研究員だったこともあり、小学生の頃につくば市にある大学院の研究室を見学させてもらったことがあるんです。プレハブの建物の中に入ってみると、服は脱ぎっぱなしで部屋は散らかり放題。本当に生活感溢れる研究室だったのですが、そこにいる学生たちの目がとてもキラキラしていて、凄く楽しそうに見えたんです。そこから「研究者って面白いのかも」なんて思い始めたことが、この道を目指そうと思ったキッカケですね。

望月さんは、現在どのようなことを研究されているのですか?

望月 自然の力を利用し、電気などのエネルギーを生み出す『再生可能エネルギー』の研究を行っています。僕が所属する「福島再生可能エネルギー研究所」では水素や風力、地熱などの5つの分野に分かれて研究を進めているのですが、その中で僕は「太陽光発電」のチームに所属し、太陽電池の品質向上に向けた研究を行っています。だけど“性能を上げる”ということはなかなか難しくて、様々な工夫を施して品質を上げたとしても、必ず別の問題に直面することになります。そのため、環境や条件などを変えて何度も実験を試みたり、教科書に載っているような計算式を改めて計算し直してみたりと、少しでも性能が改善するように地道に研究を積み重ねています。

よく目にする太陽電池の裏には、研究者の努力が詰まっているのですね。

望月 太陽光発電は180年も前からある研究テーマで、解明された部分が多くある一方、今だに謎とされることも山ほどあるんです。品質向上のためには、解明されていない部分を解きほぐさなければならないため、海外の論文を読んで最先端の研究技術を学んだり、専門外の知識を得たりと、研究職に就いた今でも勉強は欠かせません。だけど身に付けた知識をもとに、実験が成功したときは本当に楽しいんです。最初は上手くいかなかったのに次第に原因が分かり、結果として上手くいったなんてときは、思わず小躍りしたくなるくらい嬉しいですね。

逆に大変だなと感じることはありますか?

望月 研究所から支給される活動資金だけでは、充分に研究を続けることは出来ません。だから研究者にとって研究資金を集めるのも大事な仕事なのです。そこで国や公共団体、企業などに資金援助をお願いすることになるのですが、その際“過去どんな研究を行ってきたか”、“論文はどれくらい発表したか”など、これまでの功績が大きく左右されます。それでも10人応募したとしても予算が下りるのは1人程度。実力主義的な一面が大きくありますね。

望月さんの今後の目標を教えて下さい。

望月 研究者の面白いところは、今自分がやっている研究が、世界を変える大発見に繋がるかもしれないということだと思うんです。少し前の話ですが、ノーベル物理学賞を受賞した中村修二さん、天野浩さん、赤碕勇さんも、周りからは「出来っこない」と言われる中でも研究を続け、青色の発光ダイオ-ドという世界を変える発明をしました。正直、僕が今やっている研究が、世を変えるかどうかは分かりません。だけどもしかしたら10年後、20年後には、皆さんが当たり前に使われる“何か”になっているんじゃないか、そんな希望をこっそりと抱きながら、これからも研究を続けていきたいです。

Q&A

Q.エネルギー系研究者ってどんな仕事?
A.エネルギー系研究者とは、電気やガスなどのエネルギーを安定的に供給する技術や、太陽光や風力などを利用した「次世代エネルギー」の研究・開発を行う仕事です。化石燃料の枯渇や深刻な環境問題が心配されている近年において、注目を集める職業の1つといえるでしょう。

Q.なるためにはどうすればなれるの?
A.理・工学系の大学を卒業後、大学院に進学して博士号を取得し、それから公的研究機関や、電気会社に就職して研究者になるのが一般的となっています。

Q.どんな能力が求められるの?
A.これまでにない新しい技術の研究・開発を行うため、柔軟な発想力が求められます。さらに海外の文献や資料を読む機会も多くあるため、小・中学生から英語力を身につけておきましょう。

擬似的に太陽光を発生させる測定器。これらの機械は研究に必要不可欠だそう。

論文を発表する望月さん。時に海外に足を運び、自身の研究の成果を報告しているそうです。

お名前
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 所属 望月 敏光(もちづき としみつ)さん
出身地
静岡県静岡市
最終学歴
東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
休日の過ごし方
旅行、ツーリング

※この記事はaruku2017年9月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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