フライトドクター | プロフェッショナル夢名鑑

ドラマ『コードブルー』でおなじみのフライトドクター。一体どうしたらなれるの?普段は何をしているの?福島県立医科大学のフライトドクター、佐藤ルブナさんにお話をうかがいました。

スタッフと協力しながら限られた空間と時間の中で命のバトンをつなぐ仕事です。

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県立医大のフライトドクターの一人、佐藤ルブナさん。消防からの出動要請を受けると、医療器具が詰まったリュックを背負い、大至急、病院内のヘリポートへ。パイロット、整備士、看護士とともにドクターヘリに搭乗し、現場へと向かいます。

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現場へ向かうときは緊張のためか、乗り物酔いしないという佐藤さんですが、「帰りは緊張がほぐれるせいか、急に気持ち悪くなることも…」

フライトドクターになる方法を教えてください。

佐藤 大前提として医師免許を取得する必要があります。その後、救急医として経験を積み、ドクターヘリを持つ病院へ就職しなければなりません。なかには、ドクターヘリに何回搭乗しなくてはならないなど、基準の厳しい病院もありますが、私が勤務する県立医大付属病院では、高所恐怖症や乗り物酔いしやすい体質の方をのぞき、救急科に配属された医師は全員フライトドクターとなります。
県立医大付属病院では、実地の経験を積むことを重視しているので、フライトドクターの経験を積んでいる先輩医師と一緒にヘリに乗り込み、見習いとして2年間、経験を積みます。その後、先輩医師のサポートのもと、自分がメインドクターとして出動し、患者の診療にあたります。見習いから一人前になるには、先輩医師から「一人で診療しても大丈夫」と認めてもらわなくてはなりません。

最初からフライトドクターを目指していたのですか?

佐藤 いいえ。それどころか、医師になるつもりもありませんでした(笑)。高3のとき、親のすすめで参加した県立医大のオープンキャンパスで、顔面が麻痺した患者さんが、再建手術を受けて元気になり、自分の生活を取り戻していく様子をVTRで見て、医師の仕事に魅力を感じました。人の人生に関わっていけるやりがいのある仕事だと思い、県立医大を受験しました。救急に興味を持ち始めたのは、臨床の現場に関わるようになってからです。国家試験合格後は、救急医療に力を入れている病院で2年間研修医として研鑽を積みました。

一般的な救急医と違う部分はありますか。

佐藤 狭くて機材の少ない環境で患者さんの診療にあたらなくてはならないことでしょうか。それから、スピードも求められます。フライトドクターの仕事は、患者さんの容体を安定させ、最短で病院へ運ぶことです。現地に着陸して離陸するまでの平均時間は約20分です。患者さんの容体に関する事前情報の少ないなか、すばやく病名を診断し、搬送先の病院を決めなくてはなりません。

毎日フライトドクターとして待機しているのですか?

佐藤 県立医大付属病院では、フライトドクターは当番制です。当番がまわってくるのは、先生にもよりますが、週に1、2日でしょうか。県立医大ではドクターヘリが飛行するのは、8時30分から17時(5~7月は18時)までと決められています。当番の日は、出勤したらすぐにフライトスーツに着替え、常にヘリ用の電話を持ち、呼び出しに備えています。当番日以外は、救急医として救急の患者を受け入れたり、入院患者の診察にあたったりしています。

大切にしていることは?

佐藤 コミュニケーションです。ドクターヘリには、医師のほか、パイロット、整備士、看護士が乗っています。患者さんの搬送先に迷ったときこそ、まわりのスタッフの意見に耳を傾けるようにしています。

やりがいを感じるときは?

佐藤 やっぱり患者さんの笑顔を見たときですね。もしかしたら病気の前と同じとは言えないかもしれませんが、家族に支えられて新しい人生を歩んでいる姿を見ると、こちらも嬉しくなります。

フライトドクターを目指す子どもたちへアドバイスをお願いします。

佐藤 フライトドクターは、とてもやりがいのある仕事です。ドラマを見て、あこがれを感じても「私には無理かも…」と尻込みされている方もいるのではないでしょうか。でも、挑戦しないと分からないこともあります。人生は一度切りです。ぜひ、夢に向かって一歩を踏み出してください。

Q&A

Q.フライトドクターの仕事について教えてください。
A.消防署の要請によりドクターヘリに搭乗して、災害・急病外傷など救急の現場へ向かいます。そこで、初期診療を行い、適切な診療科のある病院へ患者を搬送することが主な仕事です。

Q.必要な資格やスキルを教えてください。
A.病院によって異なりますが、県立医大では、ドクターヘリに乗る前に受けなくてはならない講習がいくつかあります。それから、無線を使うので、無線の免許の取得が必要です。

Q.どんな人が向いていますか?
A.沈着冷静で即断即決できる人が向いているというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。一番大切なのは、「人命を救いたい」という気持ちだと思います。

お名前
福島医科大学付属病院 救急科 佐藤ルブナ(さとうるぶな)さん
出身地
福島県南相馬市
最終学歴
福島医科大学医学部
休日の過ごし方
自転車で仲間とツーリング。猪苗代湖周辺が好きです。読書。好きな作家は西加奈子。

※この記事はaruku2018年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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