神職 | プロフェッショナル夢名鑑

初詣や七五三、厄祓いなど、私たちの生活のあらゆる場面で神前に拝し、儀式をとりおこなう神職。どんな人が向いているの?どうしたらなれるの?今回は安積国造神社の宮司、安藤智重さんにお話をうかがいました。

神と人との仲を取り持つのが神職の仕事です。

郡山総鎮守、安積国造神社第64代宮司の安藤さん。
この地を開いた比止禰命(ひとねのみこと)の子孫であり、代々神社を守ってきたそうです。現在は宮司1名、禰宜1名、権禰宜5名が常勤しています。

朝拝や夕拝のときは曾祖父が伝えた「太鼓は波のように打て」との教えをいつも思い浮かべているという安藤さん。
人生を波のようなものと感じるそうです。

神職に就くためにどのような勉強をしましたか?

安藤 私の場合は早稲田大学で古典などを学習してから國學院大学の神道学専攻科で神職資格を取得しました。社家の生まれではありますが、神道について詳しいことはそこで学びましたね。同じような境遇の人が集まりますから、連れ立って飲みに行くのが楽しかったです。
また、地元の方々と接する中で地域の伝統も学びました。私が子どものころは、プライバシーがないくらい様々な方々が出入りしていたので、いろいろな話を耳にすることが多くありました。自分は普通の子と同じように過ごしていたと思っていましたが、知らず知らずのうちに地域の深い部分や歴史に接していましたね。20代で郡山に戻ってきたときは、明治・大正生まれの方々から地域に根差した文化や価値観について聞くことができたので、それも勉強ですね。

神職のお仕事について教えて下さい。

安藤 神と人との仲を取り持つのが仕事です。氏子(うじこ)の方々が良い暮らしができるよう祈願します。みなさんの生活でなじみ深いのは、合格祈願や七五三、厄祓いでしょうか。最近は神葬祭も増えてきたので、火葬場へ出向くことも多くなりました。地域全体が栄え、幸せに暮らせるようにとお祈りするのが春と秋の例大祭ですね。
その他にも私は、安積歴史塾の講師の1人として郡山や安積の歴史を普及しています。子どもたちに身近な音楽から伝統文化に関心を持ってもらおうと、年に2回、例大祭での奉納演奏に向けた「八幡ばやし」という笛や太鼓のお囃子の講習も行っています。

ところで、氏子とは何ですか?

安藤 氏子とはその地域の住人で、その土地の氏神にお参りする人のことです。神道は大昔に自然と地域に芽生えた宗教で、神社がその中心となってお祭りをすることで地域がまとまってきた歴史があります。地域のつながりが希薄になると犯罪などが増えるので、日本の治安の良さは各地で氏神様を祭っているコミュニティーがあるからといえるわけです。

だから神社や秋の例大祭などの神事が大切なんですね。

安藤 そうなりますね。神社のお祭りは氏子区域に住んでいる人たちが町内会単位で支え、盛り上げてくれているから大きな行事ができるわけです。秋の例大祭でいえば、歴史がある御神輿の渡御 (とぎょ※お出ましになること)や山車のひきまわしなどがそれです。安積国造神社では、2ヶ月に1回くらいの間隔で、節分や春祭り、夏越の大祓いなど地域の神事を継続して行っています。

仕事の中で、やりがいや心がけていることはありますか?

安藤 神と氏子の仲を取り持つことが役割ですから、やりがいなどは二の次です。神を敬う気持ちが大切ですから平常心で真心を込めて祈願しています。氏子の方々が協力的で話せばわかってくださるので、苦労したことなども特に思いつかないです。そういった神社と氏子との良い関係を維持していきたいです。
あとは、先祖から受け継いできたことを守る、保守的な発想も大切になってきます。神社の境内には地域の歴史や伝統、文化が詰まっています。四季を感じ、常に身近なものとして神道を感じることで、人間が本来欲している気持ちを大事にしてほしいです。また、神棚を拝むことは大切です。慌ただしさに紛れて効率ばかり追い求めるのではなく、短い時間でも毎日お祈りをすることで、自分を振り返る時間や精神的なゆとりを作ってほしいです。

今後の目標を教えてください

安藤 四季折々の行事を変わらずに続けていくことが一番の目標です。人がいる以上はそこには祭りがあって、祭りが近くなると氏子もだんだんとやる気になり、自然と人が集まってくる。そんな風に同じ事を毎年続けていけることが、幸せなことなんでしょうね。東日本大震災等で傷ついてしまった人たちも、祭りを中心に人の繋がりがありますよね。そういうのをTVや新聞などで見ていると、神社というのが地域のまとまりの中心になっているように感じます。伝統や文化、歴史を後世に形を変えず伝えていくこと。そして、みんなの心が洗われる、幸せになる。そういった方向で神社を維持していきたいと思います。

Q&A

Q.どうすれば神職になれますか?
A.世襲制が基本ですが、神職になるには神社本庁が与えている神職資格を取得する必要があり、資格を取得するためには主に4つの手段があります。①神職取得課程のある大学(國學院大學・皇學館大学)で取得する。②神道学専攻科(國學院大學・皇學館大学)で取得する。③神職養成所(神宮研修所・京都國學院・大社國學館など)で取得する。④神職養成講習会(國學院大學・皇學館大学など)で取得する。この中で、②と④は、入学に「各都道府県の神社庁の推薦書」が必要です。「推薦書」は、基本的には各神社の宮司からの推薦依頼を神社庁長が受けるという形となるため、宮司に特別信頼され、推薦依頼書を書いてもらえるよう認められる必要があります。

Q.神職の役職や階級について教えてください。
A.役職は「宮司(ぐうじ)」「禰宜(ねぎ)」「権禰宜(ごんねぎ)」「出仕(しゅっし)」等があります。会社で例えるとそれぞれ「社長」「部長」「主任」「社員」といった感じです。大きな神社だと「権宮司(ごんぐうじ)」を置く場合もあります。
また、神職身分という階級があり、上から順に、特級・一級・二級上・二級・三級・四級の六等級があります。神社界全体のためにお仕事をし、貢献することで上がっていきます。その他、階位については「浄階」「明階」「正階」「直階」といった序列もあります。

お名前
安積国造神社(あさかくにつこじんじゃ)宮司 安藤 智重(あんどう ともしげ)さん
出身地
福島県郡山市
最終学歴
早稲田大学 教育学部 国語国文学科
座右の銘
敬神
趣味
学者「安積艮斎(あさか ごんさい)」の研究。艮斎文略訳注(明徳出版社)等を著す。

※この記事はaruku2018年12月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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