郡山駅前

赤ちゃんが生まれたのに、うれしくない?

女性のための医療コラム

「赤ちゃんが生まれたのに、うれしくない?」

マタニティブルーズとは?
待ち望んだ赤ちゃんが産まれてとても嬉しいはずなのに、逆に悲しい気持ちになって涙が出たり、眠れなくなったり、やる気が起こらなかったりすることがあります。このように、産後間もなく起きる気分の変調を「マタニティブルーズ」と言います。出産直後から数日間の間にみられ、長くても2週間以内に消失する一時的な現象です。日本人の母親の2人に1人が経験すると言われていますので、必要以上に心配することはありません。
出産というドラマチックな出来事を体験した緊張と疲労感、慣れない育児に対する自信の喪失などがマタニティブルーズの要因です。また、出産前後の母体の急激なホルモンの変化に体がついていけないことが、直接的な原因と考えられています。

産後うつ病につながることも
マタニティブルーズは、しばらくすれば自然に治りますが、まれに「産後うつ病」に移行することもあります。重いうつ状態が2週間以上続いたら要注意です。単なるお産疲れだと思っていたら、次第に無気力になり、不安焦燥感、孤立無援感がつのり、訳もなく泣いたり、周囲に対する興味や関心を失ったり、なかには「死にたい」という気分にまで自分を追い込んでしまうこともあります。これが、「産後うつ病」と言われる病気です。夫も「うつ状態」になるケースもあります。出産後の女性の約15%の人が、通常、出産後1週間から6カ月頃までに発症すると言われています。
はっきりした原因はわかりませんが、産前産後のホルモンの変化や、気分の安定や睡眠に影響を与えるセロトニンという物質の働きが低下するためと言われています。また、人間関係の希薄化によって、適切なサポートを得られないこととも関係があります。現在「子育てで孤立を感じる」という日本の母親は7割もいます。赤ちゃんの発育に悪い影響を与え、虐待や育児放棄につながることもあるため、臨床心理士よるカウンセリング、薬物投与など早めの治療、ケアが必要とされます。

※妊娠と薬に関する情報はこちらを参照
国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/

お話をうかがった先生

170524_0富永國比呂先生
1975年、岩手医科大学医学部卒業、東京衛生病院産婦人科医長を経て、米国ロマリンダ大学大学院博士課程修了。日本産科婦人科学会専門医、日本性感染病学会会員、医学博士、米国公衆衛生学博士(Dr.P.H.)、国際個別化医療学会幹事、Personalized.Medicine Universe査読委員。

※この記事はaruku2018年7月号に掲載したものです。

連載