裁判官|プロフェッショナル夢名鑑

裁判官は自分の判断が問われる、その責任の大きさに私は惹かれたんです。

小さい頃は普通の子だったと話す南雲さん。小学生のころは社会が得意だったそう。

裁判官になろうと思ったのはいつですか?

南雲 司法試験合格後に裁判所で研修を受けた頃です。私は、大学入学後に司法試験を受けようと思ったのですが、最初は弁護士になろうと思っていたんですよ。でも、司法試験合格後に司法修習生になり裁判所で研修を受けた際に、自分の判断で事件を解決することが求められる裁判官の役割の大きさに魅力を感じたんです。そこで、司法修習を修了後は裁判官への道に進みました。

司法試験の勉強はどのくらいしていたのですか?

南雲 私の場合は司法試験を受験することを決めて、だんだんと日程が迫ってくるに連れて勉強時間も増えていきました。試験の直前は1日12時間くらい勉強していましたね。私が受験したのは今とは違う旧司法試験で、マークシートと論述式、口答試験の3段階になっていました。一番難しかったのはやはり論述試験でしたね。

南雲さんは何歳の時に裁判官になったのですか?

南雲 私は4回目の司法試験で合格し、26歳で裁判官になりました。それからは山形地方裁判所、東京地方裁判所立川支部を経て今は福島家庭裁判所郡山支部に所属しています。立川にいたころには、留学や出向も経験しました。

留学や出向ではどのようなことをするのですか?

南雲 私はアメリカに留学し、ロースクールに通いながら現地の裁判を傍聴して勉強しました。さらに、民間の会社に出向した時には法務部に配属され、契約書の確認などの業務を行いました。裁判官といっても、全ての人が裁判所に勤務しているわけではありません。留学したり、民間の会社に出向する場合ももちろんあります。

仕事には欠かせない六法全書。内容は毎年更新されます。

裁判官になると、どのような仕事をするのですか?

南雲 裁判官に任官しても、すぐに1人で裁判を担当するわけではありません。裁判は3人の裁判官で担当するものもありますので、初めは未特例判事補という立場で、先輩方と一緒に裁判を担当します。その後、刑事事件・民事事件の他に離婚などの家事事件を扱うこともあるのですが、1つの事件にかかる年月もバラバラなんです。私が担当した離婚訴訟事件では、2年半を要したものもありました。

1人でどのくらいの事件を担当しているのですか?

南雲 私は今家事事件を主に担当していますが、民事事件も担当しています。件数は年間で家事事件40件、民事事件60件くらいなのでトータル100件以上です。多いときには、30分刻みで裁判をすることもあります。でも、簡易裁判所の場合はもっと多くの事件を担当するようになると思いますよ。今、地方裁判所の郡山支部には刑事事件の担当裁判官が4名、民事事件の担当が私を含めて3名いますので、計7名の裁判官で様々な事件を担当しています。

とてもたくさんの事件を抱えているのですね。

南雲 そうなんです。だから、体力も必要な仕事かもしれませんね。裁判官というと裁判を行っているイメージが強いと思いますが、その裁判を行う準備で資料を確認したり、判決書等の書類作成など細かい業務も多いんです。他にも、仮差押えなどの保全事件を担当したり、勤務時間外にも、若手の裁判所事務官の法律の勉強の指導をしたりしています。

裁判官の大変なところはどこですか?

南雲 私たち裁判官の判断で事件の結論が決まりますので、その判断に間違いがないかしっかり見極める必要があることですね。過去の事案や判例もふまえ、見落としがないかをよく確認することが求められます。事件をどう解決するのかを問われる仕事ですので判断するのは大変ですが、それがやりがいでもあります。

今までで一番印象に残っている経験はなんですか?

南雲 初めて死刑求刑が妥当かどうかの判断をしなければいけない事件を担当したときには、自分の判断でその人が死刑になるか決まるということですごく緊張したことを覚えています。当時は仕事以外の時間も悩み、どんな事件であっても私たちは事実をひとつひとつ確認して過去の判例なども照らし合わせて判断するのだと改めて認識しました。だからこそ、私は事件の大きさに関わらず一つひとつの事件を丁寧に解決していきたいと思っています。

裁判官を目指す子供たちにメッセージをお願いします。

南雲 法の知識は勉強すれば身につきます。それよりも私たちは「人間はこんな時にはこんな行動をとる」や「この時にはこう思う」といった経験則に基づいて事実を認定する必要があります。そのため、私たちにとって事件の当事者の心情を考えることなどはとても大切なことなんです。だからいろんな人とコミュニケーションをとることが大事になります。そのようなことは勉強だけでは磨けないので、今のうちから様々なことを経験してくださいね。

法服を羽織る南雲さん。法服は通気性があまり良くないので夏は暑いんです、と話していました。

お名前
福島家庭・地方裁判所郡山支部 特例判事補 南雲 大輔(なぐも だいすけ)さん
出身地
群馬県前橋市
出身校
同志社大学大学院
趣味
山登り、アウトドア

※この記事はaruku2016年10月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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