ソーシャルワーカー| プロフェッショナル夢名鑑 

日常生活になんらかの不安や悩みがある方の話を聞き、支援するソーシャルワーカー。中でも今回は、心の病を抱える方をサポートする精神保健福祉士にスポットをあて、お話を伺いました。

どうやったらその人が今日笑えるか、明日笑えるか。それを一緒に考える仕事です。

普段から患者さんと話す中で、必ず一度は笑顔になるような話をするそう。

子どもの頃から、福祉の世界に興味があったのですか?

桑原 もともとは教師になりたいと思っていました。中学の担任の先生に感銘を受け、先生を追いかけたかったんです。その先生の道徳の授業が特に好きでしたね。「命」、「生きる」、「人とは」、「人生とは」、みたいな内容で、中学生ながらに人生や生きる道を教えてもらいました。

教師から、福祉の道に進んだ理由は何ですか?

桑原 教育学部を受験したが失敗し、どうしようと考えたときに、ふと小中学生のときにボランティアにたくさん参加していたことを思い出したんです。なぜかは覚えていませんが、保育園、養護学校、重度心身障がい者の施設などによく行っていました。その経験と、恩師の影響もあって人と関わることがしたいなと思い、福祉の道へ進みました。

大学ではどのようなことを勉強したのですか?

桑原 私は社会福祉士の資格も取れる精神保健福祉士コースに進みました。そこでは精神医学、心理学、法律など、広く浅くですがいろんな分野を学んだり、面談の練習をしたりしました。そして、卒業前に国家試験を受けて精神保健福祉士の資格を取りました。私は最初、児童相談所で働きたいと思っていたんです。でも、精神科病院に実習へ行ったのを機に、精神科領域に興味を持ちました。

気持ちが変わった理由を教えてください。

桑原 私たちは、当事者の世界観を知ることが求められます。患者さんの病気についてはもちろん、大事なのは病気を抱えながら生きるとはどういうことかを知ることです。だから、その人の生い立ちや今感じていること、これからどうしたいのか、などいろんなこと聞きます。その上で、ソーシャルワーカーは「共感・受容」が重要だと言われていたんですよ。でも、私にはそれができなかった。というか、できるわけがなかったんです。なぜなら相手の状況が自分の想像を超えることが多かったからです。だから、共感が大切と言われても、共感の言葉をかけるのは軽い気がしたし、模範的な言葉ではまとめられませんでした。それで、自分がそれを言える瞬間はいつ来て、どのような形なら共感できるのかを追求したくなったんです。

ソーシャルワーカーとは、どのような仕事なのですか?

桑原 大まかにいえば、話を聞いてサポートする、ですね。私は病院に勤めているので、患者さん、患者さんの家族、そしてその人を取り巻く環境にいる方々と話をします。そこで、直接本人や家族に対して悩みを解決するようなアドバイスをしたり、本人たちの悩みを地域支援者や医師、看護師などへ間接的に繋ぎ、周りの環境を整えたりします。当院は受診相談もソーシャルワーカーの仕事なので、そこでの相談も入れると下は2~3歳の子どもから高齢者まで、幅広い年齢の方々の相談に対応します。私が担当している救急病棟でも幅広い支援が求められます。

どんな形で相談を受けるのですか?

桑原 面談室で行うこともありますが、私は立ち話や一緒にリハビリ活動をしながら話すことも多いです。それから、相談員は「何かあったら相談してください」と言う方が多いですが、私は「相談させてもらいます!」と言う感じです。あなたのことをどうやったら知れますか?何をしたらサポートになりますか?と聞くと案外答えてくれるんですよ。そして、それをもとに看護師や医師や作業療法士、心理士と密に繋がりながらサポートします。時には、患者さんよりも医師や看護師、その方の家族と話していることが多い場合も。私たち自身が何かを求めていく、結果を出すという仕事ではなく、様々な方々と協力して、その人が人生をどう生きるかを一緒に考えていくんです。

普段から意識していることはなんですか?

桑原 相互作用です。感情のやり取りを通じて、互いに影響しあう力になることを意識しています。大きい意味でワーカーとは生きてくうえでどうするかということなので基本的には終わりがない。正解もないし、間違いもない。最終的には何かあったら来てね、になるけど、相談に来なくなってもその人の生活は続くので、また何かあれば関わるようになります。仕事上、別の相談窓口を紹介することはありますが、ソーシャルワーカーという立場で見ると、なんでも受け入れ、自立を促すのが仕事。あなたにとって自立って何?というところを一緒に考えたりしています。

桑原さんが思う、ソーシャルワーカーとは何ですか?

桑原 「子どもの頃、困っている人を助けたいと思った事が一度はあると思います。でも、幼少期の将来の夢を忘れてしまうように、助けたいと思ったことも忘れてしまったり、大人になるにつれ、人助けしたいとは恥ずかしくてなかなか口にできなくなります。でも、そういう仕事をまっすぐやっている人たちをソーシャルワーカーと呼びます」。これは私がたまたま読んだソーシャルワーカーの説明です。まさに、これに尽きると思います。

<ソーシャルワーカーが活躍する分野>
児童/児童養護施設、スクールカウンセラー
行政/社会福祉事務所、児童相談所、市役所
介護/特別養護老人ホーム、高齢者福祉施設
障がい者/障がい者支援施設
医療/病院
など

職場のイタリア研修にて。現地の職員と交流しながら、イタリアの精神保健福祉について学んだそう。

桑原さんがふだん過ごす部屋。あえて通路側にも窓を設け、相談しやすい開放的な雰囲気を出しています。

お名前
あさかホスピタル 総合相談支援グループ チーフ 桑原 純一朗(くわばら じゅんいちろう)さん
出身地
福島県本宮市

出身校
国際医療福祉大学 医療福祉学科
資格
精神保健福祉士、社会福祉士
休日の過ごし方
最近、キャンプが気になる桑原さん。家族と一緒に庭でキャンプをしたりしていて、今後は外でもやりたいそう。

※この記事はaruku2019年10月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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