海上保安官|プロフェッショナル夢名鑑 

船舶の航行安全や海上犯罪の取り締まり、海難救助に災害対応まで。海の安全を多方面から守る海上保安官にお話しを伺ってきました。

常に変化する海の状況を見極め、“迅速に安全に”対応できるよう心掛けています

「巡視船あぶくまでは、船が障害物に当たらないように面舵取舵の指揮や、搭載艇の上げ下ろしの指揮なども取っています」と話す髙木さん。

海上保安官を目指したきっかけは何ですか?
髙木 小さい頃、豊間海岸の近くに住んでいて、海は身近な存在でした。中学生の時に職場体験学習で福島海上保安部を訪れ、巡視船「なつい」に乗船しました。その時に『船ってかっこいい!』と思ったんです。テレビニュースなどで目にする機会はありましたが、やはり間近で見る船は迫力も違いましたね。当時、警察官に憧れを持っていたのですが、海上保安官なら船に乗って海の安全を守る、警察官のような仕事もできるとわかり、やってみたいことが合致したんです。

海上保安官になるためにどんなことを勉強されたのですか?
髙木 高校卒業後、広島県にある海上保安大学校に入学しました。倍率が高く、入学試験も難しかったですが、入ってからの方が大変でしたね。保安官になるためには海技士免許が必要です。レーダーなどの計器の仕組みや気象など、学ぶことがたくさんあり、3級海技士の免許を取得した今も日々勉強の毎日です。刑法や逮捕術といった警察業務に関する勉強に、遠泳や耐寒訓練などもあって、体力的にも精神的にもきつく感じることもありましたが、共に学ぶ同期と励まし合いながら頑張ることができました。

学生生活で思い出に残っていることはありますか?
髙木 行事で言えば海神祭(わたつみさい)です。一般の大学で言う文化祭のことですが、洋上クルージングや潜水士の実演があるのは海上保安大学校ならではだと思います。ちなみに私はチュロスとポップコーンを提供する出店の店長をしたのですが、多くのお客さんとお話しできて楽しかったですね。それから、卒業後に3か月に及ぶ練習船「こじま」での世界一周する遠洋航海実習も思い出深いです。サンフランシスコやギリシャのピレウス、シンガポールなど様々な国の港に寄港するのですが、やはり日本の海は安全で綺麗だなと改めて実感しました。

普段はどういったお仕事をされているのですか?
髙木 昨年の12月に福島海上保安部に保安官として配属になりました。巡視船の主任航海士としてパトロールや海難事故を想定しての人命救助の訓練、それから密漁などの犯罪の取り締まりをしています。漁をするにはその地域ごとに許可が必要で、無断で行えば法律違反になります。今では復興が進み漁も再開し始めましたが、漁業で生計を立てる地元の漁師さんたちを守るためにも密漁の取り締まりは重要です。

他にはどんなことをしているのですか?
髙木 海図を用いて基地から目的地までどのように航行していくか航海計画を立てることや、操船の指揮を取ることなどをしています。訓練内容を考えることもあるんですよ。私が乗る巡視船「あぶくま」には20代~50代まで約20名の船員がいます。船という限られた空間の中で、安全に素早く業務を遂行できるよう意思疎通をしっかりと取るように心掛けています。また、巡視船での活動には、自然災害時における救助活動や給水・入浴支援なども含まれます。緊急時では海上の様子も一変し、船の離着岸も難しくなりますが、安全第一で部下に指示が出せるようにしています。支援を通しても多くの方の役に立ちたいです。

どのようなときにやりがいを感じますか?
髙木 訓練の際に搭載艇(ゴムボート)の操船などが上手くいったときは達成感がありますね。船を操縦するのも好きですし、また、不審船が確認された時は哨戒に当たります。危険を伴う大変な任務ですが、港に船を係留していると「いつも海の安全を守ってくれてありがとう」と通りがかった方から声をかけられる時もあり、役に立てているんだなと実感します。7月には海の事故0キャンペーンで、市民の方に海難事故防止策が書かれたチラシを配るなどをして、海に関心を持ってもらうことができ、海上保安官の仕事を少しですが知ってもらえたことも嬉しかったです。

今後どのような海上保安官を目指していきたいですか?
髙木 現在3級海技士の免許を持っていますが、今後は2級、1級の海技士免許も取得し、船長として任務に当たるなど職務の幅を広げていきたいと思っています。警察の犯罪捜査と同じように、鑑識官として証拠品の採取・分析を行うため、鑑識検定を受けて技術や知識も身につけたいです。東日本大震災で活躍された先輩方のように、私も人の役に立てる海上保安官を目指していきたいです。

子どもたちへメッセージをお願いします。
髙木 海上保安官の仕事は船上のみならず、陸上や上空にいる仲間と共に、海の安全を守り、人を助けることができるやりがいのある仕事です。また、海図の作成など海上保安官にしかできないこともあります。海が好きな人はもちろん、人の役に立ちたいと考える人に向いていると思います。

航海計画の立案では、危険なところや工事をしている箇所がないか調べ、海図にラインを引きます。


パトロールでは海上の交通ルールに従って船が航行しているか、海中転落がないかなど、あらゆることに対処できるよう常に緊張感を持って行います。


お名前
髙木(たかき)さん
休日の過ごし方
映画鑑賞
座右の銘 
笑う門には福来る

※この記事はaruku2020年9月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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