女優 芦名 星(あしな せい)さん| プロフェッショナル夢名鑑 

等身大から悪役まで、様々な人物を演じる女優。様々な映画やドラマで活躍する郡山市出身の女優・芦名星さんにお話を伺いました。

「女優としての自信はたぶん一生無い。だけど、一度も辞めたいと思ったことも無いんです。」

郡山にもよく帰るという芦名さん。白河ラーメンや日本酒が大好きで、家族とお気に入りのラーメン店によく行くそう。

芦名さんが女優を目指したきっかけを教えてください。

芦名 私は高校入学と同時に東京に来まして、高3の時、帰り道にホリプロの本社前でスカウトされたことがきっかけです。私が通っていた高校は芸能の仕事をしている子も多く、自然と憧れがあったんでしょうね。でも、もともと女優になりたくて上京したわけではなかったんですよ。やりたいことがないまま地元の高校に行くことに違和感があって、なら東京に行った方が何か見つかるかなと。
まずは高校を決めないとと思い、母親を説得して理解してもらいましたが、父親には言わずに東京の高校を受験したので、合格してから父に報告するときは猛反対されると覚悟していました。「必ず一番になるから、東京に行かせてください」と伝えたところ、厳格な父が反対どころか「一番でなくても良いからいつでも帰ってこい」と送り出してくれたんです。普段無口な父の言葉は今もずっと心に残っていて、親の愛情をすごく感じましたね。

それから、女優のお仕事が徐々に始まったんですね。

芦名 いえ、最初はファッション雑誌のモデルからでした。最初からすぐに役をもらえるわけじゃないので、モデルの仕事をしながら、お芝居のオーディションを受けては落ちて、受けては落ちて…という日々でした。そのうち、小さい役から徐々に1クールのドラマなど仕事をもらうようになり、『仮面ライダー響鬼』の悪役で1年間出演するという大役をいただきました。日本、カナダ、イタリアの合作映画『シルク』の公開と同じくらいにドラマの仕事も増えてきて、マネージャーやスタッフさんに支えられながら今に至るという感じですね。

誰もが憧れる芸能界ですが、女優としてのお仕事は芦名さんにとってどうでしたか?

芦名 台本を読んで自分なりに準備をしても、毎回現場の監督さんにすごく怒られていました。素の自分を捨てきれず「自信を持って立てていないから、不安が出ているんだ!」と指摘されたり。それはわかるんですけど、どうやっていいかわからないからまた悩んで、また怒られて…。なんでこの子が現場にいるんだろう?って周りから思われているんじゃないかと、挨拶もできないくらい現場が怖かったですね。でも、そこで辞めたい、福島に帰りたいと思ったことは一度もないですね。

ご自身の転機となる作品を教えてください。

芦名 先ほど話した『シルク』に出演した時でしょうか。21歳のときに海外オーディションでヒロインに選ばれたんですが、海外の映画では作品作りにとても時間をかけるんですよ。その役に必要となる要素が全て準備されているので、例えば私の場合、日本舞踊、煎茶道などを撮影に入る前に習いました。役として不安がない状態で入ることができる環境と、お芝居をするためにはこれだけ大変なんだと思ったときに、役者ってすごいな、私も女優としてやっていきたいなと強く思いましたね。

いまや多くのドラマや映画に出演されていますが、女優として自信がついた時期はいつぐらいですか?

芦名 今でも女優としての自信はないです。たぶん、一生ないですよ。今でこそ自分なりに役に入り込むアプローチの仕方というのかな?が分かってきて、現場でスタッフさんたちと談笑していても、本番になるとスパン!と切り替えられるようになりました。でも自信をもって演じても、辛口に評価される時もありますし、未だに役者に向いてないんじゃないかと思う時もあります。それでも、現場や共演者から「また芦名さんと仕事がしたい」と声をかけられるととても嬉しいですし、これからも女優として続けるのが私の幸せでもあり、目標です。昨年はありがたいことに仕事が重なって目まぐるしく過ぎた時もありましたが、その方が私の精神的にはちょうど良いんです。

ハードな撮影も多いと思いますが、美容や健康のために何かされていることはありますか?

芦名 メイクを落として髪を乾かして寝る、ということだけは心がけています(笑)。それ以外特別なことはしていないですよ。髪も自分で切るので、美容院にも行ったことないんです。お酒も好きで、ごはんもモリモリ食べます。シャンプーでも化粧品でも、自分に合ったものを見つけるのが一番良いと思いますね。

最後に、将来役者を目指す子にアドバイスをお願いします。

芦名 私は15歳の時の気持ちが今に繋がっているので、女優でもなんでも、夢を持っている自分を信じて、その夢を大事にしてもらいたいですね。役者は感覚に訴えかける職業なので、役を演じるにあたり、この役はこうかな、ああかなと考える時間ははかり知れません。だから今も日々勉強です。普段から色んな景色を見たり、食べたり、試したり、何でもいいから興味を持つことが大事なんじゃないかな。そこで感じた色んな感情一つ一つが、別の誰かを演じる表現力につながっていくと思うので。

芸名の『芦名星』は、福島ゆかりの武将・芦名氏と、プラネタリウムを見て星に感動したという芦名さん自身のエピソードから。

Profile
福島県郡山市出身。「STAND UP!!」でドラマデビュー。日加伊合作映画「シルク」では日本人ヒロインに抜擢。以後、「仮面ライダー響鬼」「信長のシェフ」「天皇の料理番」「クロコーチ」「猿ロックTHE MOVIE」など多くの映画やドラマに出演。NHK大河ドラマ「八重の桜」では神保雪子役を演じる。BSテレ東『W県警の悲劇』で連続ドラマ初主演。現在、出演するTBS系日曜劇場「テセウスの船」が放送中。同じく出演映画「AI崩壊」が1/31から公開。

※この記事はaruku2020年2月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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