ラジオDJ|プロフェッショナル夢名鑑 

音楽やトークを中心にリスナーを楽しませ、時に自らの想いやメッセージを伝える。今回はラジオ番組を司会進行するラジオDJにお話を伺いました。

ラジオは特別なものではなく、大衆居酒屋のような寄り合いどころなんです。

この日はCMの収録もしていた藤原さん。久しぶりの収録でちょっとふざけてみようか?(笑)とおちゃめな様子も見せてくれました。


ラジオDJを目指したきっかけを教えてください。
藤原 初めはラジオDJではなく、クラブなどで活躍する音楽のDJを目指していたんです。高校卒業後にアメリカに留学していたのですが、そこで見たDJがかっこよくて。もともと目立つことも好きだったので憧れましたね。でも、本場のDJを見たからこそ自分じゃ敵わないなとも感じて、結局他にやりたいことも見つからず、地元に戻って仲間と一緒に音楽イベントなどを企画していました。そんな時に、音楽が好きならラジオ局で働いてみたらどうかと声をかけて頂いたんです。

そのきっかけがなければ今の藤原さんはいなかったかもしれないですね。
藤原 そうですね、周りの大人から心配されていたんだと思います(笑)。最初は機械操作などから教わり裏方として仕事をしていましたが、当時は「しゃべりて」さんも少なかったため、ラジオDJとして出てみないかと言われて。ラジオパーソナリティーとラジオDJの間に、明確な定義はないですが、ラジオパーソナリティーよりも音楽を主体に進行するラジオDJは、私のやりたいことに近かったのかもしれません。以前から音楽イベントで前説みたいなこともやっていたし、思い返せば学生の時からしゃべることも好きで。そこで、リスナーのために自分ができることって、しゃべることだなと改めて実感したんです。

初めて藤原さんが担当した番組はどんなものだったのですか?
藤原 夕方のワイド番組でした。ニュースや天気予報を読んだり、リスナーさんからのメッセージを読んだりしていました。当時は今よりも発音や感情ののせ方も下手で、先輩に録音した放送を聞いてもらってアドバイスをもらったり、朗読系の講習会に通ったりもしましたね。ラジオDJと聞くと、ただ話しているように聞こえるかもしれませんが、打ち合わせから取材をすることもありますし、番組によっては専門的な知識が必要になることがあります。学びと実践を繰り返しながら、ラジオDJとしての基礎を学んだ番組でもありました。

これまでいろいろな番組に出演されていますが、思い出に残っている番組は何かありますか?
藤原 2011年に始まった県内の6次化について紹介する番組です。農家さんを取材したり、リスナーの方と一緒に作物を作ったりもしたんですよ。しかし、開始直後は東日本大震災の影響で避難や生活情報を紹介していました。あの時は地元をどうにかしなきゃいけないと変なスイッチが入っていたと思います。そんな時に、取材で訪れたビッグパレットの担当者から「こんな時だからこそ息抜きになるようなラジオをやってほしい」と言われたことがきっかけで、ミニラジオ番組を作ることにしたんです。

避難所でのミニラジオとはどういったものだったのですか?
藤原 必要最低限の避難に関する情報は入れるけど、その他の内容は何も決めず、朝食の味噌汁がしょっぱかったとか、本当にくだらない話をしていました。最初はこれが今本当に必要なのか?とも思いましたよ。でも、みんなが悲しい怒りを抱えネガティブになっているあの状況で、自分の辛いことを一瞬でも忘れるきっかけになれば、私たちがやっている意味もあるのかなと思うようになったんです。良い意味で緊張感や固執した部分が無くなり、そこからラジオDJとしての仕事がもっと楽しくなっていきましたね。

しゃべりてとして気を付けていることはありますか?
藤原 現在、ふくしまFMで放送している「impress」のテーマでもあるのですが、リスナーの方にも自分にも「正直」であること。それから、断定や押し付けはしないようにしています。ラジオって大衆居酒屋のように、いろいろな人がいろんな想いを抱えて集まる場所だと思うんです。その日の気分でメニューを選ぶように曲をリクエストしたり、悩みを吐露したり。同じ体験をしていないと心情は解らないけど、綺麗事を言っても私には説得力がない。とはいえ、知らないのは恥ずかしいので、情報を入れつつ常識の範囲内でふざける。これは避難所でのラジオの経験から学んだことです。また、曲を流す時は多くを語らず、アーティストがこだわって作った音楽へのリスペクトも込めてフルで流すようにしています。

藤原さんはラジオ以外でも活躍の場を広げているんですよね。
藤原 6次化の番組で取材に出ているうちに顔を知ってもらえて、震災後の復興イベントで司会をすることもありました。また、福島ユナイテッドFCが立ち上がった時からスタジアムDJとしてもお仕事をさせて頂いています。同じDJ でもこちらはあくまで演出の一部。主役であるサッカーをお客さんと一緒になって盛り上げるのは、また違った楽しさがあります。今はTUFの「ちゃんろく。」などテレビ出演もさせて頂いているので、より多くの人に顔を知ってもらえているのかなと思います。

メディア関連の仕事を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。
藤原 情報を正しく伝えるということも大事ですが、その向こう側にいろいろな想いを抱えた人たちがいることを忘れないようにしてほしいですね。それから、好きなことを時間をかけて掘り下げてみてください。好きなことなら苦に感じないし、自分のやりたいことや強みが分かってくると思いますよ。

トークだけでなくターンテーブルのスイッチを操り、曲やBGMも1人でコントロールすることもあるそう。

お名前
藤原(ふじわら)さん
座右の銘
一日一新
休日の過ごし方
ウィンドウショッピング

※この記事はaruku2021年10月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

連載