理容師|プロフェッショナル夢名鑑 

ヘアカットやお顔そりで身だしなみを整える。清潔感のみならず癒しを与える理容師にお話を伺いました。

身につけた技術で幅広い年代のお客様に喜んでいただけることがうれしいです

肌の状態に合わせて丁寧にお顔そりをする黒羽さん


まずは理容師と美容師の違いについて教えてください。
黒羽 理容師の仕事場である理容室は「床屋」とも呼ばれ、男性=理容室、女性=美容室というイメージを持っている方も多いかもしれません。一般的に、理容師は容姿を整えること、美容師は容姿を美しくする仕事に分類されますが、最近では美容室に通う男性も増えてきたことから、その境界線はあいまいになってきました。理容師にできて美容師にできないことは、顔の毛を剃って化粧乗りを良くする「シェービング(お顔そり)」です。私が夫と経営している理容室では、カットは男性のみですが、女性専用のシェービングメニューも用意しています。

理容師を目指すきっかけは何だったのでしょうか?
黒羽 理容師というお仕事との出会いは、幼稚園からお世話になっていた地元の床屋さんです。女性が一人でやっているお店で、お顔そりの施術を受けるのが大好きでした。特にコンプレックスだった眉毛を綺麗に整えてもらえたのは嬉しかったですね。美容師の道も考えていたのですが、あんなに気持ち良いことを人に与えられるって凄いことだなと心の底で憧れていたことに気づき、理容師になることを決めました。

どのような経緯で理容師になられたのですか?
黒羽 郡山市の専門学校で勉強しました。理容師は国家資格ですので試験を受けなければなりません。現在は美容師と同じく、専門学校に2年間通って国家試験を受ける流れになっていますが、私の学生時代は専門学校に通う1年間に並行して理容室で働く必要がありました。朝は開店準備をした後に学校へ行って技術の基礎を学び、学校が終わればお店の手伝いをして、寮に帰るという生活で遊ぶ暇もないほどハードな1年間でしたね。

理容師として本格的な技術を習得していくまでどんなご苦労がありましたか?
黒羽 無事に国家資格を取得した後は、より高い技術を身につけたいと思い、中学時代の同級生だった夫が勤務していた埼玉県の理容室で働きました。そこでは開店から午後3時まで、新人はシャンプー、シェービング、カットの練習をする時間をいただいていました。特に難しかったのはシェービングで、傷つけると割れてしまうビーチボールをお顔に見立ててお顔そりの練習をしたり、先輩にモデルになってもらったりしました。男性のひげは人によって生える方向が違っていて、キレイに剃れるようになるまでは苦労しましたね。カットにはヘアスタイルの設計図である「展開図」というものがあり、髪の毛と展開図のイメージを照らし合わせられるようになるまでとにかく繰り返し練習を続けました。

お店を開くまでの経緯を教えてください。
黒羽 12年の修業期間を経て、夫と自分たちのお店をオープンしました。始めは男性専門だったのですが、理容師の目印である赤、青、白のボーダーがくるくる回る「サインポール」を見て「理容室=お顔そりができる」と理解している女性が何人か訪ねて来られたんです。それまで男性ばかりで、女性への施術の経験はほとんどなかったのですが、技術的には可能だったので、求められているなら精一杯応えたいとエステの勉強をして、より満足感を得られるようなメニューをそろえました。すると多くの女性のお客様にご来店いただけるようになり、今ではかなり多くの女性にもご来店いただいています。

女性への施術を始めてみていかがでしたか。
黒羽 女性の肌は男性よりも薄く、それだけ高い技術が求められます。とにかくお客様の肌を実際に触らせていただき、経験を積んできました。本当の意味で自信を持てるようになったのは、お客様から「気持ち良かった」という言葉を頂けるようになってきてからです。

施術の際に気を付けていることはどんなことですか。
黒羽 カットもですが、特にお顔そりは毎回必ず緊張します。肌を傷つけないように、痛くないようにというのを一番に、かつ気持ち良いと感じてもらえる施術ができるように常に考えています。お顔そりは生きていくために必要なものではありません。だからこそ、満足感していただけることがうれしいです。理容室のお客様は施術中に寝てしまう方が多く、カット中やお顔そり中に何かの拍子で体が動いてしまうこともあるんです。そんな時も絶対に怪我はさせられないので、お客様の呼吸の変化にも注意を払っています。

理容師のやりがいはどんなところにありますか?
黒羽 一番はお客様の心を満たせられることですね。自分が身につけたカットやお顔そりの技術で、赤ちゃんのファーストカットから90代の方まで幅広い年代のお客様をキレイにし、喜んでいただける。こんなに嬉しい仕事はありません。考えれば考えるほどすごい仕事だと感じます。

最近は男性も美容室に行かれる方が多くいらっしゃいます。理容室の魅力はどんなものだと考えますか?
黒羽 美容室とは違った癒しを与えられることだと思います。理容室の椅子は美容室と違って自動で、座ったままカット、シャンプー、お顔そりができます。そのためゆっくり休める時間が長いんですね。メニューもお客様にリラックスしていただきたい思いを込めて、フェイスマッサージなどを含めたメニューを提供しています。移動せず落ち着いて施術を受けられることは理容室の大きなメリットだと思っているので。

最後に子どもたちへのメッセージをお願いします。
黒羽 夢や目標を持つことや、それを叶えたいという強い思いは、困難や壁にぶつかったときに自分を支え、励まし、心を強くしてくれます。やってみたいことが見つかったら、ぜひチャレンジしてみてください。

ハサミやかみそりを手入れする黒羽さん。シェービングで使うかみそりは、男性と女性で分けているそうです。

お名前
黒羽(くろば)さん
休日の過ごし方
マイペースに家事をする
座右の銘
一生懸命

※この記事はaruku2022年9月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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