「市民の皆さんの助けになれることが一番のやりがいです」

郡山北警察署 富田交番所長 警察官/松﨑 悠花さん
―警察官を目指したきっかけを教えてください。
松崎 実は、すでに退官していますが父も警察官だったんです。警察官は1年から数年に一度、県内各地への転勤があります。私も小さい頃は家族と一緒にいろいろな市や町で暮らしました。一番長く住んだ福島市のほか、郡山市やいわき市、浪江町などで暮らした記憶があります。父は内勤が多く、みなさんがイメージするような警察官としての姿を見たことはありませんでしたが、夜中に呼び出されて仕事に出ていく姿は見ていたので大変な仕事だということはわかっていました。それでも、自分にとって一番身近な職業だったことが、警察官になろうと思った理由の一つでした。 でも、一番のきっかけは東日本大震災です。当時私は中学3年生で、進学する高校は避難所になっていました。そこでボランティアに参加したのですが、巡回に来た警察官が避難をされている方にやさしく声をかけたり、子どもと一緒に手遊びをしたりしているのを見たんです。避難所の皆さんも、警察官が来ただけで少し安心したような顔になるんですよね。その様子を見て、警察官じゃなければできない役割があることを知り、自分も警察官を志しました。
―お父様はどんな反応でしたか?
松崎 本当は高校を卒業してすぐに警察官になろうと思っていたんです。でも、「大学に行ってから考えてもいいんじゃないか」と言われ、関東の大学に進学しました。でも、結局4年経っても警察官になりたい気持ちは変わらず、福島県警察に願書を出しました。実は、父には内緒で願書を出したんですけどね(笑)。危険な側面もある職業なので、父はきっと反対だったと思います。でも最終的には「そこまで想いがあるなら」という感じで認めてくれました。
―警察官になるために必要な知識や経験はあるのでしょうか?
松崎 特にありません。事件の取り扱い方や法律のこと、武術や逮捕術など、必要な知識や技術はすべて警察官になってから警察学校で学べます。持っていなければいけない資格もありません。警察官というと柔道や剣道の経験者ばかりというイメージがあるかもしれませんが、私は警察官になるまで柔道も剣道もやったことがありませんでしたし、事件の取り扱いや逮捕術に関しては全員が初めての経験ですから、優劣なくスタートできます。
それよりも、警察学校の規律正しい生活に慣れることのほうが大変でしたね。大学4年間を親元から離れて暮らし、起きたいときに起きて食べたいときに食べるような生活をしていたので(笑)。
―交番のおまわりさんの1日を教えてください。
松崎 子ども達との関わりでは、入学シーズンの4月に幼稚園や小学校にお邪魔して交通安全教室でお話をする機会があります。さらに、学校の先生向けに、学校に不審者が入ってきたときに子どもを守るための指導をさせていただくこともあります。転任したばかりの先生に学区の避難場所を覚えていただくことも兼ねて5月や6月に実施することが多いですね。
午前中は、特に事件などがなければ、エリア内のお宅を一軒一軒訪問する巡回連絡に出かけます。お年寄りには「なりすまし詐欺が増えているので気をつけてくださいね」とか、お子さんがいるご家庭には「こういう声かけ事案があったので注意してくださいね」などと声をかけながら訪問しています。いきなり警察官が来てびっくりされてしまうこともあるんですが、たとえば大きな災害があったときなど、各ご家庭の家族構成を把握しておくことで安否を確認することができます。
お昼休憩の後、午後は小学生の下校時間に合わせて、子ども達が安全に帰宅できるように徒歩で警らしたり、パトカーで巡回したりします。夕方以降は当直体制となり、事案の発生状況に応じて交番や警察署で待機します。
―どんなときにやりがいを感じますか?
松崎 市民の皆さんのお困り事を解決してあげられたときですね。道案内一つであっても、誰かの助けになれることで大きなやりがいを感じます。また、事件を起こした犯人を検挙して被害者の方からお礼を言っていただけることもうれしいです。市民・県民の安全と安心を守ることが警察官の業務の根幹ですので、それが達成できたときには、やはり大きな喜びを感じます。交番勤務に限って言えば、警察署での勤務のときにはあまり得られない住民の方々とのコミュニケーションがうれしいですね。
―警察官として心掛けていることや気をつけていることはありますか?
松崎 ありがとうと思う気持ちを忘れないようにしています。私が勤務している富田地域は警察に協力的な方が多いですが、それを当たり前と思わず、何かあるたびに必ず感謝を伝えるようにしています。職場の上司や同僚に対しても同じ気持ちです。
―休日にリフレッシュのためにしていることはありますか?
松崎 ウォーキングをしながら新しいお店を発掘してごはん食べに行ったり、高校時代からの友達と遊んだり、家族と外食に出かけたりしています。中学校の頃からずっとテニスをやっていて、今でも好きなのですが、なかなかテニス仲間ができなくて…。最近は休みを利用して同僚とバドミントンをして気分転換しています。
ー子どもたちへメッセージをお願いします。
松崎 もし皆さんの家の近くに泥棒が出たら、きっと皆さん不安を感じると思います。そうした悪い人を捕まえて不安をなくし、地域の方々の日々の生活を守る仕事は、警察官にしかできないことです。そんな仕事に誇りや魅力を感じる正義感を持ったお子さんに、ぜひ警察官を目指して欲しいなと思います。
プロフィール
【お名前】
松崎さん
【最終学歴】
専修大学人間科学部心理学科
【趣味】
テニス
※この記事はaruku2025年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。