映像クリエイター|プロフェッショナル夢名鑑 

映像を通して企業や自治体の表現を手助けする、映像クリエイターにお話を伺いました。

発信したい人と視聴者をつなぐことが、映像クリエイターの役割です

2022年末、撮影チームとアメリカのシカゴへ撮影に行った時の白川さん。


現在どのようなお仕事をしているのか教えてください。

白川 映像を通して企業のブランディングや商品・サービスの紹介、自治体のPRを手掛ける映像制作会社を経営しています。

映像に興味を持ち始めたきっかけを教えてください。
白川 幼い頃は年に2~3回も入院するほど病気がちで、テレビを観ることだけが楽しみでした。だからなのか、将来の夢はいつも刑事とか、学校の先生とか、科学者とか、映画やドラマの登場人物に影響されてきたんです。それに気づいた時、人の憧れをつくる映画やテレビ、ドラマの制作に携わりたいと思うようになりました。小学校の高学年ぐらいからかなり映画を観るようになって、高校時代はレンタルビデオ店で借りてきたDVDを平日3本、休日は5本ほど見続けていました。特に『E.T.』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といったSF映画が大好きでしたね。

映像制作のスキルはどのように習得されたのですか?
白川 私の学生時代は今のようにスマートフォンもなく、カメラが身近ではなかったので、大学の映像学科に入ってから初めて撮影編集の技術はもちろん、テレビ番組、CM、ドラマ、CGといったジャンル別の映像の仕組みを学びました。何も知らない高校時代はハードルの高さを感じていたのですが、いざ飛び込んでみるとイメージが現実化して、「できる」という感覚に変わっていくのが面白かったです。
 入学してすぐは、映像制作の現場を知りたいと思ってエキストラに潜り込んだことも。その後、大学の入学者募集動画を撮影するコンペ(複数の応募作品から良い作品を選ぶこと)で評価を受けたことで学校推薦をいただき、映画・ドラマの撮影現場に照明担当として入らせてもらえることになりました。有名なドラマの現場に入ったこともあります。とにかくハードでしたが、実際に撮影の現場を見ることで作品ができるまでの過程やスタッフの動きなどを習得することができました。

映像制作を学ぶために留学もしたそうですね。
白川 ドラマ撮影の現場で出会った先輩に、「世界の映画業界は日本とは違う」と聞いたことをきっかけに、アメリカへの留学を志ました。留学先は映画撮影に特化した学部で、撮影だけ、編集だけ、というのではなく、映画作品の企画立案からプレゼン、役者のオーディション、撮影・編集までの一連の流れを学びました。映像クリエイターとしてただ好きな動画、作りたい作品を撮るのではなく、それをいかにビジネスに活用するかという視点で、個性を活かしつつ仕事を得ていくための自己プロデュース力の大切さを体感できた時間でした。

大学卒業後はどんな仕事をしていたのでしょうか。
白川 最初はフリーランスでアーティストのミュージックビデオやCMを制作していました。当時、日本の映像制作はカメラマン、ディレクターなど役割分担がはっきりしていましたが、留学先で映画の制作を学んだ時のように、撮影も編集もプロデュースもできるような存在になりたいと考え、広告代理店に入社。通販番組の制作を手がけました。その後、自分のやりたい仕事にいつでも飛び込める環境を作りたいという思いが生まれ、2016年に現在の会社を設立しました。

動画を企画・撮影する時にはどんなことを考えていますか。
白川 私が手掛ける動画は、その多くが企業のビジネスや自治体のPRで活用されるもの。映像クリエイターは発信したい人と視聴者をつなぐ役割があると思っていて、依頼主の「どう見られたいか」という思いと、映像を通して「どう見えるか」のバランスを整えていくことが私たちの仕事です。例えば、郡山市がPRとして「自然豊かなまちに見られたい」と動画を作成したのに、視聴者の印象が「田舎」だったら意図が伝わらないものになってしまいますよね。同じ映像でも、見せ方をうまく調整することが、動画に関わるすべての人の成功につながると考えています。

仕事のやりがいはどんなことですか。
白川 想像したものを形にしていく仕事なので、目に見えなかったものが形になっていくことはすごく面白いし、やりがいがあります。いろんな人に出会えるので、刺激にもなって楽しいです。一方、カメラやソフトもどんどん新しい機種が出てきて、テレビもどんどん高解像度になっていく。そういった技術の進歩と時代の変化に合わせていくのには苦労しますね。

最近はYouTubeやTikTokなどの普及で動画の作成も身近になりました。
白川 見るにしても作るにしても、動画がとても身近な時代になりましたよね。私の時代は、映像クリエイターになるには映像系の大学へ進んで経験を積むという流れが一般的でしたが、最近は自由な発想で生まれてくる動画が多く、表現も多様化していて、誰でも作り手になるチャンスがある幸せな時代だと思います。最近ではInstagramのリールやTikTokでも定型のフォーマットで動画が作れますが、おそらくそのうち見る人は飽きてくるかもしれません。もし、そういったフィールドで動画を作るのであれば、まずは定型を無視して個性を出した映像にしてみると、見る人に届く作品ができると思います。

子どもたちにメッセージをお願いします。
白川 今興味があるものをぜひ追求してみてください。自分が興味を持っているものに周りの人が関心を持たなかったとしても、目指す人が少ないほうが仕事にしやすいこともあります。親御さんも、この先未来をつくっていく子どもたちを応援してあげてください。

撮影では多くのスタッフが作品に携わります。


昨年夏に白川さんが撮影した三春町ツアーの動画より。

お名前
白川(しらかわ)さん
座右の銘
悩むなら、やれ!
昨日の夢は今日の希望そして明日の現実
休日の過ごし方
家族で小旅行

※この記事はaruku2023年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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