葬祭ディレクター|プロフェッショナル夢名鑑

ご家族の気持ちに寄り添い、希望を叶えるお見送りを実現します

「お掃除一つから、ご家族ができるだけ心穏やかに気を遣わないでいられる環境をつくりたい」と話す堀さん。

どのようなお仕事をしているのか教えてください。
 故人(亡くなった方)とお別れの儀式を行う、葬祭式場で働いています。私は司会進行やホール運営をはじめ、会場の設営・掃除、ご遺族の応対など、葬儀に関わる業務全般を任されています。葬儀は故人の人生の集大成になりますが、残された方々がお別れの気持ちに区切りをつけるためのものでもあります。これを読んでいるお子さんの中には、まだ葬儀に参列した経験がない方も多いかもしれません。「お葬式」と聞くと、ドラマや映画で見るような、暗いイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。
私たちは、葬儀本番だけではなくその前から、どのような雰囲気で、どんなことをして故人を送り出したいか、ご家族の希望を聞き出して、葬儀全体の流れをプロデュースします。例えば故人が好きだった曲をかけたり、写真で思い出を振り返るスライドショーを流したり。ご友人がギター片手に歌ったり、バイクが好きだった故人の愛車をロビーで展示したこともありました。大切な人を亡くすことは悲しいものですが、ご家族のご要望に沿い、故人らしい雰囲気で葬儀ができるようにサポートしています。

葬儀の司会で気を付けていることはどんなことですか?
 基本的には過剰な演出は避けた、聞き心地の良い話し方を心がけています。話し方は、葬儀のスタイルによっても変えます。例えば、家族や近親者のみで行う「家族葬」ではアットホームな雰囲気を作るためにやわらかい口調を心がけますが、大規模な「社葬」などでは、かしこまった堅めの口調で進行します。反対に、お手紙を代読したり、生前のご活躍を紹介したりする時には感情を込めて話すようにしています。以前、故人から家族に向けたお手紙を代読した時には練習から涙が止まらず、本番の緊張感でなんとか堪えたこともありました。

仕事を通して、どのようなことに気を付けていますか?
 とにかくご家族の気持ちに寄り添うことです。「葬儀社の人って、笑っちゃいけないのでしょう?」と言われることもありますが、進行の打ち合わせでご家族が故人との思い出を楽しそうに話していれば笑顔で接します。逆に、悲しみで言葉も出てこないという方には、間を取りつつ穏やかにお話を聞くようにしています。また、特に言葉選びには気を付けています。普段は気にならないような何気ない言葉でも、大切な人を亡くし、悲しみの中にいる方は良くない意味に捉えてしまうこともある。今掛けるべき言葉はどんな言葉なのかをじっくり考えてから話すようにしています。

葬祭式場で仕事をしようと思ったきっかけを教えてください。
 以前は学習塾で講師をしていましたが、夜の勤務で同居する両親となかなか顔を合わせられず、もし体調を崩した時に気づいてあげられなかったらと心配でした。そのため日中に動くことが基本となる仕事をしたいと思い、20代後半で転職して今の会社に入りました。もともと一人でいるのが苦ではない性格なのですが、一人でできる仕事を選ぶと人と全く関わらなくなってしまう。静かに、丁寧に人と接することができる仕事を探すうち、この仕事を見つけたのです。

入社してすぐは、どのようなお仕事からスタートしたのですか?
 まずは式場の準備やお掃除からです。仕事に必要な宗教儀礼や葬祭についての基礎知識を学びながら司会などの研修を受け、入社3ヵ月目から司会を任されました。

仕事で必要な資格はあるのですか?
 「葬祭ディレクター」という資格がありますが、仕事をするうえで必須というわけではありません。しかし葬祭に関する知識を深めるために必要なもので、知識をもとにお客様にアドバイスをすることで安心していただいています。葬祭ディレクターは葬祭業の仕事を2年続けると2級の受験資格が得られ、2級を合格して2年経つか、5年仕事を続けると、1級の受験資格が得られます。私は昼休みや仕事終わりに時間をつくって勉強し、1級、2級ともに資格を取得することができました。試験では司会進行やご家族との打ち合わせなどの実技もあり、試験を通して葬祭業の知識を身に付け、技術を磨くことができました。

お仕事のやりがいを教えてください。
 たとえ準備をしていても、人が亡くなるのは急なことです。そんな中で、私たちの考えを押し付けるのではなく、ご提案やアドバイスを挟みながら、どれだけご家族の「こんな葬儀にしたい」という思いを実現していけるかが大事だと思っています。葬儀は決してやり直しのきかないもの。いかにご満足いただけるご葬儀ができるかを考え続ける中で、「本当に良い内容で見送ることができました」とお礼を言ってもらえると、良かったという言葉だけが出てきます。どんな状況であっても、その場に応じてご家族のみなさんの気持ちを汲めるように、努力を続けていきたいです。

子どもたちにメッセージをお願いします。
 一生の時間を砂時計に例えると、残された砂(=時間)がどれぐらいあるのかは誰にもわかりません。落ちきった砂からは、その人の人生が見えてきます。そこに携われるのが、私たち葬祭業者。落ちていく砂をどんな色にしていくのか、それを決めるのは、これからを生きるみなさん自身です。当社は、葬祭式場を身近に感じていただくために人形供養祭や映画の上映会などのイベントも行っています。葬祭式場の仕事に興味のある方は、ぜひ私たちの式場に足を運んでみてください。

葬儀の前日は式場に泊まり、故人と最後の時間を過ごせる空間を提供。故人との時間を少しでも穏やかに過ごしてほしいと語ります。

お名前
(ほり)さん
出身
郡山市
休日の過ごし方
カフェ巡り
趣味
フィギュアスケートのアイスショー観戦

※この記事はaruku2024年2月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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