街の歴史をずっと見てきたお店があります。伝統の味を守り続けるお店があります。初めて食べたのにどこか懐かしいお店があります。そんな愛すべき街の老舗たちは、今日も変わらず私たちに元気と笑顔を与えてくれています。

お食事処　三松会館

”おいしい”を届けて59年。変わらないおいしさは、ふるさとの宝物。

オムライス650円は昔ながらの懐かしい味わい。肉ニラ玉定食830円などご飯がすすむ定食類も充実。

郡山駅前の庶民的な定食屋さんとして数え切れないほどの人々のお腹と心を満たしてきた『三松会館』は今年で創業59年を迎える老舗です。時代が移り変わっていく中、ずっとお店が愛されてきた理由を店主の松崎さんに伺うと「古い店だと思ったことは一度もないんだよ」と、意外な答えが返って来ました。半世紀以上前の郡山駅前にはたくさんの定食屋や食堂がひしめき合っていたそう。そこにわずかテーブル2席の小さなお店として『三松会館』は誕生しました。当時は他のお店より遅くまで営業し、出前を中心に営業していたのだとか。また、昭和40年台に洋食ブームが訪れた際にもいち早くメニューに取り入れてきました。そうした人々や時代のニーズに応え続けるサービス精神があったからこそ、厳しい競争を勝ち抜き、お店が大きくなっていったのかもしれません。今では定食から麺類、丼ものに洋食まで100種類以上のメニューが並び、建物も50名の宴会にも対応できる5階建て(4・5階はお住まい)の立派な店舗に成長しました。

「うちには特別なものはないかもしれません。でも、今日食べてもまた明日食べたくなるような料理を作りたいんです」そう話す松崎さん。お店が大きくなっても変わらずに大事にしているのが注文から提供までのスピード。そして、手ごろな価格でお腹いっぱい食べられるボリュームです。そんなたくさんの魅力に惹き付けられ、今日も『三松会館』 は多くの人の活気であふれています。

天ぷら　佐久間

父から息子へ。受け継がれる技と味。

揚げ場で並んで天ぷらを揚げる正敏さんと明さん。息の合った仕事ぶりはさすが親子。
ホール担当は娘さんや明さんの奥様。家族の仲の良さが素敵。※旬の味覚を使った揚げたての天ぷら12品を味わえる「雪コース」3,465円

今年で創業40周年を迎えた『天ぷら佐久間』は、郡山初の天ぷら専門店。店主の佐久間正敏さんはおいしさの秘訣にて「天ぷらはネタと油で8割が決まる。残りの2割は技術！それを習得するのに10年はかかるんだ」と話します。旬の魚介や季節の野菜など、食材へのこだわりはもちろんのこと、最高ランクのごま油を惜しげもなくこまめに交換して揚げた天ぷらは、まさに職人技。素材の香りや甘みがじわーっと広がる極上のおいしさです。この味を受け継ぐのが息子の明さん。正敏さんの紹介で東京のお店で修行を積み、戻ってきてから7年。今では並んで揚げ場に立ち、日々沢山のお客さんの下を楽しませています。

「いろんな天ぷら屋を見てきましたが、親父のような天ぷらをつくる人はどこにもいませんでした」少し照れながらも、お父さんへの尊敬の言葉を口にする明さん。この信頼関係が老舗の味を紡いでいくのだと感じさせられました。

【閉店】サラダの店　赤とんぼ

なつかしの味とご夫婦の笑顔にまた会いたくなる老舗洋食店。

①40年間夫婦二人三脚。いつも笑顔で迎えてくれる栗田さんご夫婦。
②ひとりでも気軽に過ごしやすい『赤とんぼ』の店内
③赤とんぼポークカツ940円(セット1,360円)お客さんに喜んでもらいたいから料理はどれもボリューム満点

入り口に飾られたメニュープレート。可愛らしい女の子が目印の看板。郡山駅前大通りに面した『赤とんぼ』は、ついふらっと立ち寄りたくなる昔ながらのあったかい洋食屋さんです。お店を営むのは栗田さんご夫婦。穏やかな笑顔が印象的なご主人が黙々と料理をこしらえ、いつも元気な奥さんがそれをてきぱきと運びお店をきりもりしています。ハンバーグやナポリタン、チキンガーリックなどのメニューは、昔からほとんど変わらないなつかしの味。店名通りどの料理にも山盛りのサラダを自家製のドレッシングと一緒に楽しめるのも『赤とんぼ』スタイルです。実は栗田さんご夫婦は東京の出身。「最初は不安だらけでした」郡山に来た40年前を奥さんが振り返ります。それでも昨年の震災直後にもいち早く営業を再開し、周囲の人を勇気付けてくれた『赤とんぼ』。今では街に欠かすことができない愛すべき老舗です。

まだまだある！老舗たちの看板メニュー。
愛すべき老舗たちには、それぞれのお店を背負って立つ看板メニューがあります。たとえば、郡山のハンバーグ店の草分け的存在である『コンコンブル』のチーズハンバーグ。「“味が変わった”と常連さんたちに言われないように気を遣うんだ」と、話す2代目ご主人が素材も作り方も変えずに伝統の味を守り続けています。
また、老舗の味には懐かしい記憶を揺り起こしてくれる不思議な力があります。『大友パン』のパンで購買部のパンを求めて並んだ高校時代を思い出し、『たけや』のおにぎりに小学校の運動会や遠足のシーンが浮かんだなんて人も多いのでは！？
帰郷する度にお店に足を運ぶ県外在住の郡山出身者が多いのも、老舗のお店が人々に愛されている何よりの証拠です。
老舗が醸し出す店内の素朴な空気感もなんともステキ。イタリアンを家族連れや男性客でも入りやすいカジュアルな場所に変えた『ミオパスタ』。昔ながらの喫茶店、という言葉がピッタリの『珈琲の街』。料理の味はもちろんのこと、居心地の良い店の雰囲気に触れたくて、何度も足を運んでしまうのかもしれません。

レストラン　コンコンブル

ジューシーなハンバーグを覆うたっぷりのとろけるチーズとさっぱりとした甘めの特製デミグラスソース。さらに、このハンバーグの醍醐味はナイフを入れる瞬間！半熟の卵がトローっとあふれ出し、鉄板の上には幸せな世界が広がります。

大友パン

飽きさせない種類の豊富さと、毎日食べても飽きないおいしさが『大友パン』の菓子パンの魅力！サクサク生地にふんわりカスタードが入ったメロンパン、3層の甘さがクセになるチョコマーブル…。あなたの思い出はどれ？

たけや

一つひとつ手作りで握られた『たけや』のおにぎりは、つややかなお米の粒を感じるほっとするおいしさ。ほんのり効かせた塩加減もまた絶妙。一番人気の味ご飯や鮭など、創業以来ほとんど変わらない顔ぶれに心まで癒される。

スパゲティの店　ミオパスタ

飲み干したくなるほどおいしいスープと、スープの味が染み込んだパスタを一緒に楽しめる創業以来の看板メニュー。魚介のトマト風味では、具だくさんの魚介と爽やかなトマトの酸味に、ピリッと効かせた唐辛子がアクセント。

珈琲の街(福島市)

ふわふわの卵の中にはホクホクのじゃが芋とチーズ。これに自家製クリームソースが相性抜群。バターが染みたパンもソースにひたして一緒に楽しもう。食後にはもう一つの看板メニュー、ソフトヨーグルトをお忘れなく！

※この記事はaruku2012年9月号に掲載したものです。価格(税込表記)や内容は取材時のものです。