理学療法士|プロフェッショナル夢名鑑 

病気やケガなどによる身体機能障害を改善へと導く。今回は理学療法士として従事されてきた及川さんにお話を伺いました。

薬だけでは改善が難しいからこそ、理学療法という選択肢もあると思うんです。

「理学療法士の資格を持っている人の中でも、私のような存在は異質だと思います(笑)。」と及川さん。


理学療法士を目指したきっかけを教えてください。
及川 中学生の時の友人がバスケで靭帯を損傷してしまい、病院にお見舞いに行ったことがきっかけです。その友人は手術をしてリハビリが必要だったのですが、そこで理学療法士という職業を初めて目にしてかっこいいなと思ったんです。もともと人と関わる仕事に就きたいと考えていましたし、医師や看護師以外にも患者さんの役に立てる職業があると気づけたのは大きな転機だったと思います。一浪して大学に入学し、国家試験を受けてなんとか理学療法士になることができました。

理学療法士と作業療法士の違いは何ですか?
及川 リハビリに当たる分野の違いと言えば良いでしょうか。重なり合う部分もあるので明確に区切るのは難しいですが、理学療法士は病気やケガなどで身体の状態が悪くなってしまった患者さんに対して、「起きる」・「立つ」などの基本的な動作のための身体づくりを担当します。これに対して、作業療法士は物を掴んだり、着替えたりといった退院後の日常生活を送る上で困らないように、より細かな動作のリハビリを担当します。

及川さんは以前、総合病院で働かれていたんですよね。
及川 2つの総合病院のリハビリテーション科に13年勤務し、急性期から回復期までの患者さんをみてきました。病気や怪我をされて間もない患者さんが多くいらっしゃる急性期では、
医師による手術や点滴などでの治療やが必要ですので、さまざまな動きの制限がある中で理学療法士がリハビリを行います。意識のない状態でも入院当日からリハビリを始めることも珍しくなく、最初は私も不安や緊張を感じることがありました。しかし、寝たままの状態が長く続いてしまうと筋肉は衰え、関節も硬くなってしまい、意識が回復する前のできるだけ早期から理学療法士が介入することはとても大事なことなんです。

患者さんと意思疎通がとれない状態だと難しいですよね。
及川 意識がないので医師や看護師に状態を確認し、患者さんの身体に繋がれた機器の数字とにらみ合いながら行っていました。細かなところに常に気を配らなくてはいけないので、大変でしたね。リハビリをしていく上で、体を横向きにしたり起こしたりする時には血圧や体調の変化などが生じる危険性があります。そういったリスクを減らすためにも医師や看護師などとのチーム内での情報共有は欠かせませんね。

回復期になるとリハビリの仕方も変わってくるのでしょうか?
及川 急性期に比べると病状他安定してくるため、理学療法士によるリハビリはそれまでの治療の補助的な介入から、退院や社会復帰のために必要な動作の練習に変わってきます。
具体的には、ベッド上での限られた動きの練習から、「立ち座り」・「歩き」・「階段昇降」などの大きな動きの練習になっていきます。この時期になるとリハビリの細かい内容については、医師から理学療法士に任される部分も多くなります。患者さんからの信頼はもちろんですが、医師からもリハビリに関するプロとしての信頼がなければいけません。責任も強く感じますが、同時にやりがいも感じていました。

そんな及川さんですが、現在はアレルギー専門整体院を開かれているんですよね。
及川 きっかけは次男の喘息やアトピー、アレルギー症状が酷かったことです。3歳くらいまでは入退院を繰り返す日々で、辛い症状の我が子を目の前にして何もできない悔しさやもどかしさを感じました。また、アレルギー症状が出る度に薬で抑えることはできても、繰り返す症状の根本的な解決には至っていないことが多いと感じました。アレルギーについては知らないことだらけだったので、まずは知ることが必要と思い、アレルギーに関する学会や研修会などに参加しました。アレルギーの原因、治療、薬の開発などを知っていくうちに、理学療法で培ってきた評価や介入技術が、アレルギー症状を持つ患者さんの役に立てるのではないかと思い始めました。その頃から次男の症状に対して理学療法士の視点で評価・介入し始めて、効果が見られたこともあり、とても嬉しくなったことを覚えています。
アレルギー体質専門院の「アレルコア」を開院。アレルギー症状や自律神経のトラブルを持った方の身体の状態は、十人十色で悩むことも多いですが、施術やアドバイスによって症状が改善したという声を聞けると本当に嬉しいです。

理学療法士を目指す子どもたちへメッセージをお願いします。
及川 医療職の中でも人と密に関われる理学療法士の仕事は、皆さんが思っている以上にやりがいのある楽しい仕事だと思います。病院だけでなくスポーツ選手のケガ予防など、いろいろな分野で活躍できる職業でもあるので、興味のある分野に突き進んでいってほしいですね。

一人ひとりの症状に合わせて、分析と実践を繰り返しながら症状改善へと導いていきます。


お名前
及川(おいかわ)さん
座右の銘
一期一会
休日の過ごし方
子どもたちと外遊び

※この記事はaruku2021年11月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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