シリアスブリーダー|プロフェッショナル夢名鑑 

純血種の犬を守り、伝えるブリーダーにお話を伺いました。

犬と飼い主、両方の幸せをつなぐことが使命です

犬中心の生活が心から幸せという梅原さん。迷ったら「犬にとっていいことなのかどうか」を判断材料にしているといいます。


シリアス(優良)ブリーダーとはどんなお仕事なのでしょうか?
梅原 よく「子犬を産んで販売すること」と捉えられがちですが、シリアスブリーダーとは犬を愛し、心身ともに健康な純血種を後世に伝えていく仕事です。私は今、福島から移住した高知でパグ専門のブリーダーとして活動しており、9頭のパグと暮らしながら年間5頭ほどの子犬を送り出しています。ブリーダーが子犬を産み出す際には、大きく2つのこだわりがあります。一つは見た目。犬には、犬種ごとに骨格や性格の指標などを定めた「全犬種標準書」というものがあります。もちろん人目線の理想でしかなく、すべての犬が沿うべきというわけではありませんが、標準書に近い骨格であれば将来的に足腰を悪くするリスクを下げることもできます。もう一つは、遺伝性疾患をなるべく抑えた犬を生み出すこと。実は、犬の遺伝子疾患は数が多く、それを引き起こす原因も多くあります。遺伝子検査を通して遺伝子疾患がなるべく少ない犬と交配させて病気の連鎖を食い止めることも、ブリーダーの仕事の一つです。

最初は別なお仕事をされていたそうですね。
梅原 幼い頃から当たり前に身近に犬がいる生活で、動物に関わる仕事がしたいとずっと口にしていました。最初に就職したのは不動産会社ですが、動物に関わることをやっぱり諦めきれず大阪の動物保護団体で仕事をしたり、郡山市で友人とトリミングサロンとペットシッターのお店を開いたり、高知に移住した後は、本格的にブリーダーとしても活動するようになりました。

パグ専門のブリーダーになろうと思ったきっかけは何だったのですか?
梅原 パグとの出会いは小学生のころ、「ムツゴロウさん」こと畑正憲さんが監督した映画「子猫物語」で主人公のネコと親友になるパグの「プー助」に一目ぼれしたことです。おっちょこちょいで、顔も行動もひょうきんで…。そんなパグの「ブサ可愛さ」がたまりませんでした。その後、ペットショップで憧れのパグを購入したのですが、お迎えした1週間後に入院してしまい、その後も病気続き。その後迎えた2代目のパグは、病気もせず16歳の今も元気いっぱいです。
2頭のパグたちを見ているうちに、犬の病気は両親が持つ遺伝子に大きく影響されることを知りました。つまり、遺伝性疾患のない健康な犬同士を計画的に交配すれば、病気のリスクが少ない子犬が産まれる。犬が健康で幸せだと、飼い主の幸せにもつながる。幸せな「犬生」を送れる犬を一頭でも増やしたい、と思ったことがきっかけです。

健康な遺伝子をつなげていくために、どのような交配を行っているのですか?
梅原 犬と出会う場が、標準書により近い犬を競う品評会「ドッグショー」です。子犬を産む雌犬も、ドッグショーに出られる「ショータイプ」と呼ぶ純血種を迎える必要があります。そこで自分の犬の欠点を補ってくれる犬舎にお願いして交配し、より理想に近い子犬が産まれるよう努力しています。

ブリーダーにはどうすればなれるのでしょうか。
梅原 ブリーダーとして仕事をするには第一種動物取扱業の許可と、動物取扱責任者の資格が必要です。そして最も重要なことは、他のブリーダーや譲り受ける飼い主との「この人なら安心して任せられる」と思われる信頼関係。やはり命を扱う仕事ですからね。きちんと愛情をもって、犬の健康管理やドッグショーに出陳するなど、欠点が少ない犬を産み出していく努力や経験を積み重ねていくことが大事だと思います。ですから「お金を儲けたい」という前提ではブリーダーは務まりません。動物の遺伝子疾患を気にせずどんどん繁殖させてしまうと、動物たちも、受け入れる飼い主もお互い不幸になってしまいます。

ブリーダーのやりがいはどんなことですか?
梅原 子犬が産まれてすぐの、最高にかわいい時期を独占できるのはブリーダーの特権ですね。この期間はしつけるのではなく、とにかく人のやさしさや温かさ、たくさんの愛情をわかってもらうための時期。うれしい仕事でもあり小さな命なので責任の伴う時期となります。我が家は親犬のそれぞれの性格を見るためリビングで一緒に生活するようにしています。私も子どもが二人いますが、育て方は人間の赤ちゃんと全く変わりません。そんな大事な家族ですから、経済面や環境、真剣さを見て、安心できる方にお譲りしています。これからも犬と飼い主の幸せを繋ぐ、ブリーダーとしての役割を全うしていきたいですね。

子供たちにメッセージをお願いします。
梅原 両親や身近な大人たちに「現実を見なさい」と言われなかったからこそ、この夢を実現できたんだと思います。大好きな犬との暮らしを仕事にした私は、毎日が楽しくてあっという間。好きは仕事になりますし、好きだからこそもっともっと知りたい、学びたいという欲も出てきます。子どものうちは、親や先生だけではなく関わる大人の数だけ成長できます。大人と友達になりましょう。そして、自分はどんな大人になりたいか考えてみて下さい。

梅原さんが飼育するパグたち。取材後にもエコーで赤ちゃんが確認できたそうです。


お名前
梅原(うめはら)さん
座右の銘
人生の主人公は自分
休日の過ごし方
犬たちとお出かけ・ゴルフ

※この記事はaruku2023年1月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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