小学校教師| プロフェッショナル夢名鑑 

時には子どもの人生にとって大きな影響を与える学校の先生。やりがいあふれる仕事の楽しさやこれからの学校教育について伺いました。

「郡山から世界に飛び出す子どもを育てたい」
10年後を見据えた教育をしていきたいです。

子どもたちの個性や多様性を大事にしながらやる気を上手く引き出す大和田先生の授業。子どもたちからも慕われています。

学校の先生を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

大和田 正直に言うと「絶対に教師になりたい!」という強い想いがあったわけではなく、漠然と選んだ進路が教育学部だったというか…。大学卒業後は数年間学校の講師として働いていましたが、このままではいけないと思っていました。ちょうどその頃大きな転機となったのが、ロータリー財団という公益財団法人の補助金制度を利用し、文化交流生としてアメリカで半年間過ごした経験でした。

海外に行きたいという気持ちは昔から強かったのですか?

大和田 元々、映画や洋楽が好きだったこともあり、海外の生活への憧れはありましたが、語学が堪能だったわけではありません。ましてや留学先は日本人どころかアジア人すらほとんどいないルイジアナ州。「自分の今までは何だったんだろう」というくらいカルチャーショックを受けながら、文化交流生の期間が過ぎた後もそのままアメリカに残り、インターナショナルスクールや日本人学校の教諭として働いていました。自分が成長できる環境でとても刺激的な毎日でしたね。

海外で充実した生活を送っていた中、なぜ日本に戻ってくることになったのですか?

大和田 たまたまオンラインニュースで目にした記事に、郡山ザベリオ学園小学校の先々代の理事長が取り上げられていたんです。思い切ってコンタクトを取り、話を聞いた時の「郡山から世界に飛び出す子どもを育てたい」という言葉は今でも忘れられず、今の私の目標となっています。アメリカを離れることに迷いもありましたが、生まれ育った郡山でそんな学校づくりに携わることができたら素晴らしいと想い、ザベリオ小学校の教師になる道を選びました。

現在のお仕事について教えてください。

大和田 6年生のクラスを担任しています。教師の仕事はやはり授業が中心。いい授業を行うための準備や振り返りも欠かすことができません。また、学校全体をよくするための先生同士の意見交換や、学校行事の計画など授業以外の仕事も数多くあります。忙しい中でももっと最先端の教育を子どもたちに還元したいと考え、積極的に海外の最先端授業を研究しています。その甲斐あって、今春ADEというアップル社が認定するプログラムメンバーとして選出されました。

それはどのようなプログラムなのですか?

大和田 タブレットや電子黒板など、最新のICT技術(Information and Communication Technology(情報通信技術)の略で、タブレットや電子黒板などを活用した教育のこと)を教育現場に活用することを目的としたプログラムです。iPadを使った授業などは日本にも少しずつ広まってきていますが、世界から見るとまだまだ遅れているのが実情です。7月にはアップル社主催のオーストラリアでの研修会に招待を受けました。様々な国の人たちがどのようにICTを取り入れた授業をしているのか、実際に触れて持ち帰り、郡山から発信できればと思います。ICTをうまく使えば他の国の子どもたちとの接点も作れるはずです。「世界に飛び出す子ども」を育てるためにも、できることには積極的にチャレンジしていきたいですね。

他に子どもたちと接するときに心がけていることはありますか?

大和田 子どもたちの今だけじゃなく、10年先を見据えた授業ができればと思っています。例えば、先日の授業参観でeスポーツをテーマに学級討論会を行いました。賛成派と反対派に分かれ、本や映像、文献などで集めた情報をもとにお互いの意見を主張しあう本格的な討論会です。根拠を元に自分の意見を述べることや、様々なツールで情報を集めることなど、子どもたちが大きくなった時に使う知識がたくさん含まれていると思います。

教師の仕事をしていて印象に残っているエピソードはありますか?

大和田 一昨年の修学旅行の時に、ある生徒が食事の後にお礼の手紙をテーブルに書き残したことがありました。その話を今年の6年生にそれとなく話したところ、クラス全員が感謝の手紙を書き残したのです。それを見た料理長が「こんな経験は初めてです。直接お礼を言わせてください」と本当に喜んでくれ、目の前に登場してお礼を言ってくれました。「こうしなさい」と言ったわけでもないのに、自主的に動いた子どもたちの行動から、素敵な感謝の連鎖が起きたのを目の当たりにして、とても嬉しかったです。

子どもたちにとっても忘れられない素敵な経験になったと思います。

大和田 教師の言葉で子どもたちに思いもよらないスイッチが入ることがあります。責任も重大ですが、それ以上にやりがいを感じますね。子どもたちと接するときは私の考えが正しいと押し付けるのではなく、子どもたちに考えさせる、子どもたちと一緒に考えられる教師でいたいと心がけています。そして、「郡山から世界に飛び出す子どもを育てたい」という目標のためには、「郡山でも世界最先端の教育を受けられる」ことが必要です。そのために、良いものをどんどん取り入れて発信していければと思っています。

いち早くICT教育を取り入れている郡山ザベリオ学園小学校。
「スマホやタブレット、YouTubeは教育に良くないものではなく、使い方ひとつで可能性がどんどん広がる!」と大和田先生。

修学旅行で子どもたちがレストランの方々に書いたメッセージ。
子どもたちの心からの感謝の想いが伝わってきます。

お名前
大和田 伸也(おおわだ しんや)さん
出身地
福島県郡山市
出身校
安積高校(111期)、福島大学教育学部
座右の銘
「無言実行」「言葉にするよりもまず行動する!」という意味。この言葉をデスクの横に貼って戒めにしているのだそう。
休日の過ごし方
7月のオーストラリア研修に向けてのプレゼン資料づくり。
家族と一緒に美味しいものを食べに出かけることも多いのだとか。

※この記事はaruku2019年7月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。

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