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公開日:
2026.6.5
更新日:
2026.6.5

和太鼓奏者|プロフェッショナル夢名鑑

和太鼓奏者|プロフェッショナル夢名鑑

世界を舞台に活躍する和太鼓奏者に話を聞きました。

「“楽しい”と思える気持ちが、夢の実現につながってく」

演奏元気さん

和楽器の概念を超え、国内外を股にかけ活動する遠藤さん。

―和太鼓を始めたきっかけを教えてください。
遠藤 自分では覚えていないのですが、小学4年生の頃、母と和太鼓の演奏を見て「かっこいい」と言ったことがあったそうです。それを母が覚えていて、「地元にも太鼓の団体があるからやってみたら?」と誘ってくれました。きょうだいの影響で水泳やピアノも習い、特に水泳は高校3年生まで続けましたが、自分から「やりたい」と思って始めたのは和太鼓だけ。その音色や演奏する姿に、子どもながらに強く惹かれたのだと思います。その衝動が演奏家としての現在の活動につながっています。

―具体的にどんな活動をしていますか?
遠藤 福島県内での演奏活動をメインに、県外、さらには海外で演奏する機会もあります。尺八や三味線など和楽器との共演はもちろん、異なるジャンルの演奏家と共演することも多く、そのたびに和太鼓の可能性が広がる感覚があります。演奏活動の合間にはオリジナル曲の作曲にも取り組んでいます。

―演奏で大切にしていることは?
遠藤 表現の幅や他の楽器とのバランスを考えながら演奏することです。和太鼓というと大きな音が出るイメージを持つ方が多いと思います。しかし、実はとても繊細な音も出せる楽器です。僕自身、太鼓を始めた頃は、音の強弱を考えたことがあまりありませんでした。しかし、プロとして活動するようになってからは和太鼓を楽器のアンサンブルのひとつとして捉える機会が増え、周囲との調和やバランスを意識するようになりました。今も勉強の連続ですが、まだまだ大きな可能性を秘めた楽器だと思っています。

―曲作りではどのようなことをイメージしていますか?
遠藤 僕の故郷である川俣町山木屋地区の豊かで美しい風景を思い浮かべながら作ることが多いですね。自然の中で育った記憶が曲作りの原点になっていて、風の音や人々の暮らしなど、自分のなかに息づいている故郷の情景を楽曲で表現したいと思っています。曲作りは19歳の頃から続けていますが、経験を重ねるほど自分らしい曲作りができるようになってきていると感じます。

―山木屋は東日本大震災で大きな影響を受けた地区ですね。
遠藤 はい。避難指示が出され、約6年間、避難生活が続きました。山木屋地区には古くから伝わる伝承太鼓があり、それを継承する「山木屋やぐら会」の親子組織として、2001年に「山木屋太鼓」が結成されました。私も2003年頃から参加していました。しかし、避難によってメンバーが集まりにくくなるなど、震災後は本当に苦しい時期が続きました。当時すでに曲作りは始めていましたが、震災直後に作った曲をあらためて演奏すると、自分のなかにあった苦しさや行き場のない感情をそのまま表現したように感じる曲もあります。
ただ、震災を経験したことで、故郷への想いは以前よりずっと強くなりました。離れて初めて気づいた山木屋の素晴らしさもあります。そんな想いを楽曲にすることで震災を伝えることも、自分が果たすべき役割の一つだと思っています。

―現在も山木屋太鼓に参加し、子ども達への指導にも力を入れているそうですね。
遠藤 震災後、山木屋地区では子どもの数が大きく減りました。太鼓のメンバーも年々少なくなる中、町内の保育園や幼稚園の協力を得て和太鼓体験教室を行い、まずは太鼓を知ってもらう活動を続けました。そこで興味を持ってくれた子どもたちが今、山木屋太鼓の未来を担う存在としてメンバーに加わってくれています。川俣町内だけでなく福島市などから通ってくれている子どももいます。
僕は、和太鼓には人と人とのつながりを生む力があると思っています。地域を越えて子どもたち同士の交流が生まれ、新しいコミュニティが育てばうれしいです。

―子どもたちに指導するうえで心掛けていることはありますか?
遠藤 
僕自身、太鼓が楽しかったからこそ今まで続けてこられました。だから、一番大切にしているのは、子どもたちに楽しんでもらうこと、そして太鼓を好きになってもらうことです。

―最後に、和太鼓や音楽の道を目指している子どもたちへメッセージをお願いします。
遠藤 僕は最初から和太鼓奏者になりたいと思っていたわけではありません。震災を経験し、自分にとっての当たり前が当たり前でなくなったときに初めて、自分が本当に好きなものに気づきました。それが和太鼓だったんです。だから皆さんも、今すぐ夢が見つからなくても大丈夫。何かを「楽しい」と感じる気持ちを大事にしていれば、その気持ちを突き詰めた先に、夢や仕事につながる道が見えてくるかもしれません。自分の「好き」を否定せず、信じ続けてほしいと思います。

遠藤元気さん和太鼓を演奏している様子

筋力も必要な和太鼓奏者。最近では体づくりも考え食生活にも気を配っているそう。

山木屋太鼓の練習で子ども達を指導する遠藤さん。

山木屋太鼓の練習で子どもたちを指導する遠藤さん。

プロフィール

 

【お名前】
 遠藤 元気(えんどう げんき)さん
【最終学歴】
 福島学院大学短期大学部 専攻科福祉専攻第一部卒
【趣味】
 仕事も趣味も和太鼓です
【ポリシー】
 何事も楽しむこと

※この記事はaruku2026年5月号に掲載したものです。内容は取材時のものです。